日本政府による4月7日の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を受け、首都圏や関西圏を中心に百貨店やファッションビルなどが休業を発表した。各社、さらなるウイルス感染拡大を防ぐため、実店舗からオンラインショップにシフトする策を講じているが、ブラジャーは商品を選択する上で接客と試着が重視される商材だ。最近ではSMLのサイズ展開のノンワイヤーブラやブラトップの需要が高まり、試着なしの購入が増えた一方で、大人の女性を中心に「このまま楽なブラジャーを着け続けて私のバストは大丈夫なのか」という不安の声が聞かれるようになった。その声に応えるために、昨年ごろから下着メーカーは、知見と開発力を生かしたバストメイクブラの開発や採寸・フィッティングのサービスに力を入れており、異業種から参入するメーカーとの差別化を図っている。
また、同社が19年5月に導入した、3Dボディースキャナーを使って自分で計測できるサービス「ワコール 3D スマート アンド トライ(WACOAL 3D SMART&TRY)」は、現在8店舗に拡大している。今年3月末までの計測者は約1万5000人で、最初に導入した東急プラザ表参道原宿では20〜30代前半の客が65%以上を占めている。対面して採寸する恥ずかしさや試着の煩わしさを軽減することを目指したサービスだったが、「計測後は『ブロの意見やアドバイスが欲しい』という声が多く、予想以上に対面接客が求められている」という。それは、フィットネスにおけるパーソナルトレーナーの人気やナイトブラ(就寝時用ブラ)のヒットからも分かるように、幅広い年齢層でボディメイクやバストメイクへの関心が高まったためで、それらに対してよりパーソナルなアドバイスが求められていることが分かる。
「ピーチ・ジョン」の
バストメイクブラが45万枚のヒット
「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN以下、PJ)」は、20年3月期は国内事業の黒字化を見込んでいるが、それをけん引しているのがいずれもバストメイクにフォーカスした2つの商品だ。19年2月に発売したメリハリのあるボディーラインを実現する“ナイスバディブラ”は、20年3月末までに販売数45万枚を突破、19年7月に発売したやせ見えと見た目体重を減らすことをコンセプトとする“スマートブラ”は20年3月末までに28万枚を売り上げた。これまでは、20万枚売れればヒット商品という認識の下着業界において、絶好調の販売枚数になっており、バストラインが気になり始める30代はもちろん、20代にもバストメイクのアプローチが響いている。
「トリンプ」は
年4回のフィッティングを推奨
「トリンプ・インターナショナル・ジャパン(TRIUMPH INTERNATIONAL JAPAN以下、トリンプ)」は3月4日から「メジャーフォーミ―(#measure4me)たかが下着が、わたしを変える」というキャンペーンを開始している。“正しいブラジャーをつけることは、ボディーの快適さをもたらし、前向きな気持ちにもつながる”とうたい、かねてから推奨していた年4回のフィッティングをあらためて打ち出して、その大切さをアピールするというものだ。それに伴い、3月12日から東京・六本木ヒルズのヒルズカフェ/スペースで、同社のフィッティングエキスパートが無料採寸するサービスなどを含む体験型ポップアップカフェ「メジャーフォーミ― ポップアップ カフェ(#measure4me POP UP CAFE)」をオープン予定だったが、新型コロナウイルス感染予防のために開催は中止になった。
「トリンプは」現在、新型コロナウイルス対策として全国で試着室での接客を中止しており、試着を希望する客には“インナーウエアの美しい着け方”を説明するリーフレットを渡している。洋服と違って下着は着用してに試着室から出られない上に、体に触れての接客となるためだ。
下着メーカーの強みを生かした商品展開やさまざまな取り組みが実を結び始めた矢先の業務やサービスの縮小は残念だが、全ての業種が同じく厳しい状況下にある。営業が完全に再開された際に、さらに充実したフィッティングサービスやバストメイクブラを提案するための準備期間と考えたい。
川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身