新型コロナウイルスは感染に対する恐怖に加え、厳格な外出制限、在宅勤務をはじめとする生活環境の変化、失業や業績悪化などにより、体だけでなく精神的な負担を人々に与えている。米国では免疫力を高めるべくビタミンやインナービューティ製品の売り上げが急増しているが、“心の健康”に気を使う人も増え、ウエルネスやマインドフルネスをうたうアイテムやサービスの需要が高まっているという。オンラインサイト「グロッシー(GLOSSY)」によると、グウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)が手掛けるライフスタイルプラットフォーム「グープ(GOOP)」のウエルネス関連のコンテンツの3月上旬のページビュー(PV)が23%アップし、中でも「不安を軽減する8つの方法」という記事のPVは734%もアップしたという。また人々は少しでも不安を和らげるべく、リラックス効果が期待できるアロマや化粧品、さらにはメディテーションアプリなどに手を伸ばしているようだ。
製品で注目を集めているのは、昨年あたりからブームが続くCBD入りの化粧品。大麻から取れる成分「CBD(カンナビジオール)」はいわゆる精神作用(”ハイになる”作用)はないものの乱れた自律神経を安定させるとも言われており、北米(州によって法律は異なる)における大麻の合法化がきっかけに多くの化粧品にも含まれるようになった。「プラント ピープル(PLANT PEOPLE)」は2月の売り上げが前年に比べて40%アップ、CBD入りのソーダを作る「リーセス(RECESS)」も3月上旬の売り上げが倍増、CBDカプセルなどを手掛ける「プリマ(PRIMA)」も3月上旬の売り上げが10倍と、精神的な安定を求め、CBD製品を購入する人が増えている。
自宅で過ごす時間が増え、リラックス効果も期待できることからキャンドルの売り上げはグローバルで伸びている。「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」は中国でホームフレグランスの売り上げが倍増し、イギリスの売り上げの3分の1が現在ホームフレグランスとなっている。「ディプティック(DYPTIQUE)」もキャンドルの注文が増え、ニューヨーク発のフレグランスブランド「D.S. & ダーガ(D.S. & DURGA)」はECの3月のホームフレグランスの売り上げが3倍、卸しも倍増したという。
一方で、心の安定、不安を和らげようとするメディテーションも注目だ。世界保健機関や米国疾病予防管理センター(CDC)などの団体は自社サイトで、メンタルヘルスに関する注意喚起やホットラインの案内をしており、中には規則正しい生活リズムに加えメディテーションを推奨するところも。アップルのアップストア(北米版)には在宅ライフをサポートするアプリ特集の中でメディテーションやリラクゼーションアプリを集めており、これらのアプリの多くはサービスを無料で提供している。そのほか米電子掲示板「レディット(REDDIT)」にはコロナウイルスで悩む人が互いを支え合う“サポート”スレッドができ、多くの人が不安や悩みについて話し合っている。
元々米国ではマインドフルネスやウエルネスなど、精神の健康に気を使うことが近年トレンドとなっていたが、今回のパンデミックでさらにその意識は高まりそうだ。