1990年生まれのチャールズ・ジェフリー(Charles Jeffrey)が手掛けるブランド「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」は、個性派がそろうロンドン・メンズ・コレクションの中でも異彩を放っている。
同氏は2015年に名門セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)を卒業後、自身が学生時代に主催していたクラブイベント「ラバーボーイ」を冠したブランド名で16年春夏シーズンにコレクションデビューを飾った。17年には英国ファッション協議会(British Fashion Council)による若手デザイナー支援プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」にグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)やリチャード・マローン(Richard Malone)、ニコラス・デイリー(Nicholas Daley)らとともに選出されると、ロンドンメンズの中でも存在感を徐々に増していく。祖国であるスコットランドの民族衣装からロンドンのパンク、ユースカルチャーまでを縦横無尽に取り込んで自らのストーリーに落とし込んだコレクションは、ほかにはない振り切った強さがある。「ニュージェン」の同期に比べると、プロダクションやビジネス面では正直なところまだ発展途上ではあるものの、天衣無縫な人柄と破天荒なクリエイションは、同質化が危惧される昨今のファッション界において唯一無二の個性であることは間違いない。少し大げさかもしれないが、ファッションを通じて混沌とした世界を明るい未来へと導く力を秘めていると思う。1月のロンドンメンズで20-21年秋冬コレクションを披露した直後に、ブランド立ち上げから将来についてまでを聞いた。
ド派手なショー演出は「観客への敬意」
――ファッションデザイナーになろうと思ったきっかけは?
チャールズ・ジェフリー(以下、ジェフリー):若い頃、SNSの「マイスペース(Myspace)」を通じてロンドンを見た時かな。バンドのザ・ホラーズ(The Horors )やクラブのブームボックス(Boom Box)、デザイナーのガレス・ピュー(Gareth Pugh)といったあらゆるカルチャーが一つの都市の中で融合していて、僕もその中の一つになりたいと思った。だからセント・マーチン美術大学に通い、スタイリングからコレクションを作っていく過程までさまざまなことを学んだんだ。
――ブランドの揺るぎない哲学は?
ジェフリー:どんな過程においても、オーセンティックであることを忘れないことさ。作品から溢れ出るエネルギーを人々が感じ取り、楽しんでもらえるような服作りを常に意識しているんだ。
――ショーでいつもユニークなセッティングに力を入れているのもそれが理由?
ジェフリー:そうだね。世界中からわざわざ見に来てくれる観客にはいつも感謝しかない。その人たちへの敬意を示すためにも、ショーの15分の間に最大6カ月間練り上げてきたクリエイションを詰め込んで、価値あるものにしないといけないんだ。演出やセットがあまりにも大掛かりだから、中には「服だけが見たい」という人もいるけれど、そういうリクエストにもちゃんと応えているよ。でも、ただ奇抜にしたり派手にしたりしているわけではなくて、全体的なビジョンや僕たちが伝えたいことをショーで表現しているつもりさ。
――では20-21年秋冬コレクションで伝えたかったことは?
ジェフリー:今回は、故郷スコットランドのオークニー諸島とグラスゴーへのリサーチの旅から着想を得たんだ。オークニー諸島の一つであるサウス・ロナルドジー島の小さな町を訪れた際に馬の祭りをやっていて、小さな子どもたちが馬に扮して砂浜を掘り起こしながら、人間と自然の関係を祝っていたのが興味深くてね。その後、グラスゴー美術学校(Glasgow School of Art)で見た、芸術家のメアリー・マクドナルド・マッキントッシュ(Mary McDonald Macintosh)の衣装や、スコットランド人画家のジョン・バーン(John Byrne)がリーゼントヘアのテディ・ボーイ(1950~60年代の不良少年の呼称)を描いた作品にも影響を受けたかな。これらをミックスした世界観を見てもらいたかったんだ。
――ショーはいつも大入りで、18年には「LVMHプライズ」のファイナリストにも選出されるなど順調に成長を続けているが、次のステップは?
ジェフリー:若い頃はよく他人と自分を比較して「もっと成功したい!」とずっと考えていて、世界でも40を超える卸先と取引できている現在はその願いをやっと叶えつつある状況さ。次はもっと会社を大きくするために、安定して成長させることかな。日本も重要なマーケットだから、早く行きたいんだよね。20-21年秋冬はロンドンを拠点にするデザイナーがパリコレに挑戦した例もあるけれど、僕は今季はロンドンがふさわしいと思ったから地元での発表を選んだ。でも、次はどこにしようかな。
――では最後に、ファッションデザイナーとしてブレグジット(イギリスのEU離脱)についてはどう考える?
ジェフリー:もう、マジで大っ嫌い!