「シャネル(CHANEL)」や「ブルガリ(BVLGARI)」など多くの有力ブランドのアイウエアを手掛ける、世界最大のアイウエア企業ルックスオティカグループの積極的な日本への投資が続いている。しかし新型コロナウイルスの影響で、4月下旬に東京・渋谷で予定していた「オークリー(OAKLEY)」初のグローバル旗艦店のオープンは5月上旬に延期となり、福井県に建設中の工場の工期も左右されそうだ。日本のビジネスの状況を日本法人ルックスオティカジャパンのフランチェスコ・アルクーリ(Francesco Arcuri)=ゼネラル・マネジャーに聞いた。
WWD:新型コロナウイルスの影響は?
フランチェスコ・アルクーリ=ルックスオティカジャパン ゼネラル・マネジャー(以下、アルクーリ):イタリアやその他の地域のルックスオティカの生産工場は一時的に操業を停止しているが、中国の工場は通常の製造レベルに戻っており、eコマースも引き続きグローバルで稼働している。日本において、社内は可能な限りリモートワークを取り入れ、接客も停止し、ミーティングはすべてオンラインで行っている。また、緊急事態宣言発令中は、「レイバン(RAY-BAN)」「オークリー」「アラン ミクリ(ALAIN MIKLI)」の直営店を一時的に休業とした。
WWD:「オークリー」の新店は、ブランド初のグローバル旗艦店として力を入れている。
アルクーリ:オークリーストア渋谷店は、幅広い商品ラインアップだけでなく、ブランドの世界観を強く表現したストアだ。スポーツを愛する人々のためにデザインされ、従来の店舗の概念をはるかに超えた体験型の空間だ。東京を象徴する渋谷のスクランブル交差点からほど近いロケーションにおいてエデュケーショナルなエンターテインメントスペースとして機能し、テストやテクノロジーのショーケース、ライブストリーミングイベント、アーティストとのコラボレーションなどさまざまな企画を予定している。
WWD:傘下の福井めがね工業のモノ作りに対する評価は?
アルクーリ:福井めがね工業は、高い職人技、デザイン、上質な素材で世界中に知られる伝統的なメイド・イン・ジャパンの卓越性と品質を象徴している。金属素材のデザインや彫金技術において多数の熟練職人を擁する福井めがね工業を通じて、日本のモノ作りの伝統のノウハウ、文化、および感性をルックスオティカグループが共有できることは有意義だ。福井の新工場の竣工は今夏を予定している。今後も鯖江への投資を継続し、ルックスオティカのビジネスモデルに沿って卓越した生産の柱を構築していく予定だ。イタリアのアゴールドやカドーレにある当社の工場と同様、福井めがね工業だけでなく、幅広い独創性、創造性、職人技を持つ鯖江地区の多数の中小規模の生産者とモノ作りの文化を共有し、必要なサポートをしていきたい。
WWD:昨年は、伊勢丹新宿本店1階のアイウエアコーナーにルックスオティカが開発したデジタルプラットフォーム「バーチャルオプティカルストア」をアジアで初めて導入した。デジタル強化の状況は?
アルクーリ:ルックスオティカは、デジタル化に多くの投資を行っている。企業向けには、「マイルックスオティカ(MyLuxottica)」というウェブサイト上で商品ラインアップの確認や発注ができるプラットフォームをすでに運用しており、顧客も活用している。また、伊勢丹新宿本店のバーチャルオプティカルストアは、当社が手掛けるブランドの豊富な商品を店頭で閲覧でき、バーチャル上での試着・オーダーを可能とした。在庫の有無にかかわらずバーチャル試着が可能で、バーチャルミラーリング技術による高解像度のリアルタイムレンダリングによってAR(拡張現実)で眼鏡フレームが表示され、実際に顔に掛けているかのようなリアルな着用感をさまざまな角度から確認することができる。顧客や消費者とのコミュニケーションのためのデジタルプラットフォームを開発することにより、市場におけるオペレーションを進化させている。ルックスオティカグループ内の抜本的な技術革新により、眼鏡事業全体のデジタル化の機会を提案でき、業界全体に利益をもたらすプロセスの革新につながるものだ。
WWD:現段階で新型コロナの影響の先行きは不透明だが、今後計画していることは?
アルクーリ:昨年は「レイバン」4店舗と「オークリー」1店舗をオープンするなどエキサイティングな1年だった。2020年も「オークリー」3店舗と「レイバン」1店舗のオープンなど直営店の拡大を予定している。主要百貨店との戦略的パートナーシップも進めており、伊勢丹新宿本店1階と銀座三越1階に続き、阪急うめだ本店でも消費者との接点を持てるアイウエアコーナーを手掛ける予定だ。国別の売上高は非公表だが、卸売が中心の日本のルックスオティカ全体に占める売り上げ構成比率は約2%。特に、オプティカルフレームについては今後も大きなビジネスチャンスがあると捉えている。