ビューティ

コロナショックから回復しつつある中国の化粧品市場 新たなトレンド“半顔メイク”が浮上

 新型コロナウイルスの感染者数が減少している中国。発生地とされる武漢市も都市封鎖が4月8日に解除された。そんな中国では2カ月以上の外出禁止期間が終了し、少しずつ“通常営業”に戻りつつあるようだ。また、一部報道によると事業の営業が再開されるとともに「経済のV字回復」や「リベンジ消費」が始まっているとされている。ビューティ業界ではここ数年、中国市場がグローバル企業の売り上げをけん引し拡大路線を続けており、そんな中での新型コロナは、業績に大きな打撃を与えた。現在、中国のビューティ市場もV字回復を果たしているのかーー。日本の化粧品ブランドの中国進出をサポートする日本美粧協会のカスタマーサクセス担当でもあり、同法人が主宰するチャイナ コスメティック ラボ(CHINA COSMETIC LAB)の主席研究員を務める秋山美雪氏に、新型コロナによる中国市場の影響についてヒアリングした。

 秋山主席研究員は「中国国家統計局が発表した最新のデータによると、今年1月から2月にかけて、化粧品市場の小売り総売上高は387億元(約5805億円)で、前年同期比14.1%減少した。しかし、中国国内の化粧品売り上げの30%を占めるTモール(TMALL)では3月の美容関連商品の売り上げが前年同月比で50%増加した。また、(日経ビズゲートの報道によると)3月8日のアリババ(ALIBABA)の『女王祭』イベントでは、売り上げが倍増したブランドアイテムは2万点に登るとも言われている。すでに“リベンジ消費”は始まっていると考えられる」と話す。実店舗の休業でECで買うしかなかったり、日本に渡航できず日本の製品を越境ECで買うしかなかったために数字が伸長しているとも考えられるが、それにしても大きな伸びであることは明らかだ。

 今回のパンデミックは売れ筋製品やトレンドにも影響を与えた。「新型コロナの流行前までは“口紅経済”と呼ばれるくらい、中国の化粧品市場では口紅がヒットアイテムだった。しかしマスクの着用により口紅を付ける機会が減少した。目元にフォーカスを置いた“半顔メイク”が流行り、口紅の代わりにアイシャドウをはじめとするアイメイク製品が台頭している」。今後、新型コロナは収束しても完全な終息ではないことから、外出が可能になったといえども、マスクの着用は手放せなくなると予想され、アイメイクの需要はさらに高まると予想する。また、スキンケア製品やシャンプーなど、自宅でできるセルフケアアイテムが売り上げを伸ばしたといい、「3月の中国のオンラインの売り上げは、スキンケアの購買人数が約7000万人になり、前月比で21.33%増加した」。

 これらの売り上げの“仕掛け”には、元々強さを発揮していたライブ配信やECなどデジタルの力も大きいようだ。外出が禁止されている間、デジタルを駆使した販売戦略が加速した。「『婦人節』では上海の商業施設『新世界城』が38時間におよびライブ販売を行い、上海ファッションウイークはアリババと協業して3月24~30日にARランウエイなどを使ったファッションショーのライブ配信を行って251万人が視聴した。また、中国スマートフォンメーカーの錘子科技はCEOがライブ販売を行い、1億1000万元(約16億円)以上を売り上げ、抖音(中国版ティックトック)史上最高記録を達成した」。営業再開した実店舗でもライブ配信を行いオフラインへの送客を図る店舗もあるようだ。

 外出禁止が解けた今、「実店舗についても、営業を再開しはじめており、上海では営業時間も通常に戻った店舗が多いようだ。杭州では消費者にクーポンを配るなど(オフラインの)消費を促したケースもあり、少しずつ回復傾向にある。化粧品関係の工場の稼働率もほぼ100%回復している」と秋山主席研究員は語る。

 だが一方で市場全体を見ると、新型コロナの影響で破産に追い込まれたり、飲食店や中小企業などいまだに営業再開がかなわない店舗もある。市場全体の完全回復までの道のりはまだ時間を有するとされるが、少しずつコロナショックから脱却している動きが見られる中で、今後の消費動向にも期待が掛かる。アフターコロナで先をゆく中国の動向は、全世界が注目しているところだろう。

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