ケリング(KERING)の2020年1〜3月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比15.3%減の32億320万ユーロ(約3747億円)で、既存店ベースでは同16.4%減だった。同社は売上高が同13〜14%減、既存店ベースでは同15%減となる見通しを3月下旬に発表しており、それをやや下回る結果となった。
ブランド別の売上高では、「グッチ(GUCCI)」が同22.4%減の18億410万ユーロ(約2110億円)、「サンローラン(SAINT LAURENT)」が同12.6%減の4億3460万ユーロ(約508億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が同10.3%増の2億7370万ユーロ(約320億円)だった。
フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「新型コロナウイルスの影響が非常に大きかった。グループ内のあらゆるレベルでコストを削減し、手元資金を確保することを優先する。難局ではあるが、当社の確固たる財務基盤と柔軟性があれば乗り越えられると確信している」と語った。
ジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)最高財務責任者(CFO)は、「設備投資額を2ケタ減らすなど大幅なコスト削減を行うが、以前から進めていた新たな物流施設の建設やECの改善などのプロジェクトは予定通り実行する。危機的な状況下ではあるものの、効率性や回復力、柔軟な対応力などをこの機会に磨き、将来に向けた備えをさらに強化しながら前進していく」と述べた。
同氏によれば、3月31日の時点では世界中の店舗のうち53%が休業していたが、その後に日本や東南アジアでも休業措置が取られたため、4月上旬の時点では店舗全体の3分の2が休業している。一方で、一足早く事態が落ち着いた中国では明るい兆しが見えているという。同氏は、「中国本土の主な都市で売り上げが回復してきており、都市によっては前年同期比で2ケタ増となる店舗もありそうだ。特に『グッチ』が好調で、4月上旬には売り上げがプラスに転じている。中国市場の需要回復とともにさらに成長するだろう」と述べた。なお、「グッチ」は同社の売上高全体の60%以上を占めており、昨年度の営業利益の82%を占める稼ぎ頭だ。
「サンローラン」は「グッチ」と比べると売上高の減少が緩やかだったが、これは逆に中国市場での店舗数が少ないことが幸いしたという。
多くのブランドが苦戦する中、「ボッテガ・ヴェネタ」の売上高は前年同期比10.3%増、既存店ベースでは同8.5%増と業績が伸びている。ダニエル・リー(Daniel Lee)が19年にクリエイティブ・ディレクターに就任して以降、同ブランドはさらに人気となっているが、それが裏付けられた格好だ。春夏コレクションの売れ行きも好調で、卸も同55%増となった。デュプレCFOは、「北米や欧州の店舗が休業となっているので、今後もこうした売り上げが維持できるとは思わないが、こうした危機的な状況下でも『ボッテガ・ヴェネタ』の新製品を手に入れたいという消費者の購買意欲に衰えがないことをうれしく思う」と話した。
生産工場の多くが操業を停止していたことから、ケリングの傘下ブランドでは秋冬物の入荷が2〜4週間遅れる見込みだという。同氏は、「春夏コレクションを通常よりも長く店頭に置く予定だ。スケジュールがずれるので昨年よりも多くの商品が値下げされると思うが、全体としては大きな問題ではない。事態の収束後に業績を速やかに回復させるべく、ベストセラーやロングセラーに注力する」と説明した。
経費削減策の一環として、ピノー会長兼CEOは4月から年末まで基本報酬の25%を返上するほか、20年の変動報酬(業績に連動した報酬)を返上する。ジャン・フランソワ・パル(Jean-Francois Palus)=マネジング・ディレクターも、同じく20年の変動報酬を返上する。また、配当金を30%減とすることを5月に開催される定期株主総会で提案する。
ケリングのライバルであるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は4月16日に20年1〜3月期(第1四半期)決算を発表しており、売上高は同15.4%減とケリングとほぼ同水準の減少率だった。