モンクレール(MONCLER)の2020年1〜3月期決算は、売上高が前年同期比18.0%減の3億1010万ユーロ(約362億円)だった。
地域別の売上高では、イタリアが同24.5%減の3453万ユーロ(約40億円)、イタリアを除く欧州・中東・アフリカは同6.4%減の1億118万ユーロ(約118億円)、南北アメリカは同22.1%減の4168万ユーロ(約48億円)、アジアとその他地域は同22.4%減の1億3269万ユーロ(約155億円)だった。
同社は3月31日の時点で世界に213の直営店と64の売り場を構えているが、4月中旬の時点で130の店舗などを休業している。販売チャネル別の売上高では小売りが同18.9%減、卸は同15.3%減といずれも減収だったが、ECは各地域で売り上げを伸ばしている。
レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「この3カ月間は“それ以前”と“それ以後”の分水嶺として記憶されるだろう。世界は今“見えない敵”に直面しており、われわれは未知の困難に立ち向かっている。これを乗り越えるには互いに協力し合い、連携する必要がある。この難局から学んだことを糧に再始動し、行動するべきときだ」と語った。同氏はまた、「スタッフには基本に立ち返ること、デジタル化をさらに推進すること、そして社内外の関係者や顧客と綿密にコミュニケーションを取ることを指示した。苦しいときだが、大切なのは長期的な成長であり、短期的な結果を出すために近道をするつもりはない」と補足した。
モンクレールはさまざまなクリエイターとのコラボコレクション「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」を展開しているが、危機的な状況下にあることから存続を見直す可能性があるという。同氏は、「今すぐ判断することではないが、顧客のムードを見極めながら検討する。私自身としても前向きに取り組めるようであれば継続するし、そうではない場合は変更する。業績回復のためだけに、店に顧客を呼び寄せるようなことはしたくない」と説明した。
ルチアーノ・サンテル(Luciano Santel)=チーフ・コーポレート&サプライ・オフィサーは、「中国本土では3月下旬から4月にかけて全ての店舗が営業を再開しているため、売り上げが回復してきている。当社はアウターウエアが主力製品のため、もともと4月と5月は売り上げが緩やかであることは考慮すべきだろう」と述べた。売上高全体の43%を占めているアジアとその他地域で22.4%の減収となっているが、日本と韓国は新型コロナウイルスの感染拡大が遅かったことや需要が堅調だったことにより、業績は比較的よかったという。
ブランド価値を維持しつつ在庫リスクを軽減するため、同社では20年秋冬コレクションの生産を減らし、春夏コレクションを9月ごろまでと通常より長く店頭に置く。またベストセラー商品は21年春夏まで取り扱うとしている。同氏は、「売り上げや利益を得るという意味ではアウトレットに商品を卸すのが最も簡単な解決法だが、ブランド価値を台無しにしてしまう。当社がその手段を取ることは絶対にない」と述べた。
ルッフィーニ会長兼CEOは、「6年にわたって2ケタ成長を続けてきた後に、こうした大幅な減収や店舗の休業、物流やサプライチェーンの混乱を見るのはつらいことだが、在庫を抱えるリスクなどを軽減するべく迅速に手を打った」と説明した。
同社は手元資金としておよそ7億ユーロ(約819億円)を確保しているものの、今後を見据えていっそうのコスト削減に取り組む。その一環としてルッフィーニ会長兼CEOが今年分の報酬を返上するほか、配当金の支払いを中止した。不急のプロジェクトを延期して設備投資額を30%削減することに加え、広告キャンペーンや紙媒体への出稿を減らしてマーケティング費用を縮小する。また、店舗の家主とも賃料の交渉をしている。同社は20年に新たに12〜13店をオープンする予定だったが、何店かは延期するという。