新型コロナウイルスが猛威を振るう中、ヨーロッパでは秋に開催予定のイベントにも暗雲が立ち込めている。現在(4月23日時点)、フランスでは7月中旬まで、ドイツやデンマーク、ベルギー、オランダでは8月31日もしくは9月1日まで、大規模イベントを禁止。さらにドイツの首都ベルリンでは、すでに10月24日まで5000人以上のイベントの禁止が決まった。これにより、6月28日〜7月2日に予定されていたベルリン・ファッション・ウイークは中止。期間中に開催予定だった大型合同展の「プレミアム(PREMIUM)」や「パノラマ(PANORAMA)」「ネオニット(NEONYT)」なども全てキャンセルとなった。また、夏の音楽フェスは軒並み中止になり、9月4〜9日に行われる世界最大級の家電見本市「IFA」も通常開催を断念。9月27日のベルリンマラソンも延期になった。ドイツでは4月20日から感染拡大防止のために導入した規制を一部緩和しつつも、感染リスクの高いイベント開催には慎重な姿勢を見せており、ファッションだけでなく毎年恒例のさまざまなイベントに影響が出ている。
ヨーロッパの主要都市で開催されるファッションイベントを見ると、6〜7月のメンズとオートクチュール・ファッション・ウイークは中止や延期となり、ロンドンやヘルシンキなどファッション・ウイーク自体をオンラインに移行するケースも増えている。8月上旬に予定されるコペンハーゲン・ファッション・ウイークや大型合同展「CIFF」は、中止の公式発表こそないものの通常開催が難しいのは決定的で、代替案を検討している。一方、9月以降に関してはまだ決断は時期尚早で、状況を見ているところだろう。現状、フィレンツェのピッティ・イマージネ・ウオモは6月から延期し9月2〜4日に、ミラノ・ファッション・ウイークはメンズとウィメンズの合同になり9月22〜28日に行われる予定。その後、9月28日〜10月6日にはパリ・ファッション・ウイークが控えている。
しかし、各国の感染拡大やコントロールの状況を見ると、ベルリンのような規制が他の大都市でも発令される可能性は高いように感じる。そうなった場合、5000人のボーダーラインでは個々のファッションショーは実施可能であっても、期間中に開かれる「トラノイ(TRANOI)」や「プルミエールクラス(PREMIERE CLASSE)」といった大型合同展は規制の対象になる。そして、たとえファッション・ウイーク自体を開催できたとしても、世界各国からの人の往来が自由になっているかや、“3密”になることが多いショーやイベント会場に万全の状態で人を集めることができるのかという問題もある。もちろん毎シーズン、生のショーが持つ力を体感している身としては、このまま新型コロナが収束に向かい、皆が安心できる形でファッション・ウイークが開かれることを切に願う。しかし、ヨーロッパの現状は決して楽観できるものではないのも事実。それぞれが秋に向けて、プランBを用意しておく必要があるだろう。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。