新型コロナウイルスの影響により各国で外出制限や店舗の休業措置が取られていることから、ECの利用率が大幅に伸びている。家の中で快適に過ごすためのルームウエアやインテリア雑貨などが売れていることは想像に難くないが、自宅にこもらざるを得ないストレスを発散するため、アメリカではアルコールや大麻といった“悪いもの”の消費が増えているという。
米調査会社ハリス・インサイツ・アンド・アナリティクス(HARRIS INSIGHTS AND ANALYTICS)のリポートによれば、消費者の5人に1人が「新型コロナウイルスの影響によって以前よりもアルコール摂取量が増加した」と回答している。18〜35歳の若者に限定すると、それがおよそ3人に1人になるという。
大麻やCBD(大麻草成分)、アルコール、アダルト関連テクノロジー分野への投資を専門とする米投資会社バイス・ベンチャーズ(VICE VENTURES)のキャサリン・ドカリー(Catharine Dockery)創業パートナーは、「セルフケアの手段としてこれらの商品を購入する人が増えている。ニコチンを含有するガム『ルーシー(LUCY)』なども、自宅を煙で汚すことなくニコチンを摂取できる商品として人気を集めている」と語った。なおアメリカの一部の州では、娯楽用の大麻も合法となっている。
米バイオテクノロジー企業オーソゴナル・シンカー(ORTHOGONAL THINKER)のアレックス・スパイザー(Alex Speiser)最高経営責任者(CEO)は、「医療目的の大麻をオンラインで注文できるカリフォルニア州のスタートアップ企業メドウ(MEADOW)も、飛躍的に業績を伸ばしている。人々は新型コロナウイルスを怖れると同時に、自宅で過ごす時間が長くて退屈している。“悪いもの”を生活に取り入れることで気を紛らせ、ストレスを軽減しているのだろう」と分析した。
同氏はまた、「08年のリーマン・ショックなどに端を発した世界的な大不況の頃から、心の健康に関する消費が急激に増加した。今回の危機的な事態の収束後も、そうした傾向がさらに進むことが予想される。今後は、幻覚をもたらすような非合法の薬物なども使用するサイケデリック療法も、対処法として認められるようになるかもしれない」と述べた。
しかし気が沈むようなこの状況をうまく乗り切るには、互いに思いやりを持って支え合うことが一番だと専門家らは口をそろえる。ドカリー創業パートナーは、「世界中の人々が同じ恐怖や苦しみを味わっており、この苦境を乗り越えるためには協力し合うしかない。“悪いもの”を提供している企業は、誰もが精神的にも肉体的にも大変な思いをしていることを認識するべきだ」と説く。
スパイザーCEOは、「パンデミックを経験したことで、人々の中で何が重要かの定義が変化している。幸せな人生を送るために最も重要なのは、心身ともに健康であることだ。これを機に、グローバルな大手ブランドばかりではなく、地元の小さな店や事業をサポートしようという機運が高まっているのも素晴らしいことだと思う」と話した。