ファッション

1990年代にブレイクした「ビューティービースト」が復活 20年ぶりに安藤大春とのコラボプロジェクトを発表した理由とは?

 東京のデザイナーズブランド「ビューティビースト(BEAUTY:BEAST)」の山下隆生と、「ミドラ(MIDDLA)」の安藤大春は、コラボレーションブランド「ニード(N.E.E.D)」を20年ぶりに復活させる。

 「ビューティービースト」といえば1990年代に東京やパリでコレクションを発表し、熱狂的なファンを抱えていたブランド。デザイナーの山下は2000年に「ビューティービースト」を休止した後、さまざまなファッション企業でメンズ、ウィメンズ、子ども服、スポーツウエアなどのディレクションを担当し、20年に「ビューティビースト」を再始動(再始動のタイミングで「ビューティービースト」から「ビューティビースト」に変更)。「ミドラ」は「ドッペルゲンガー(DOPPEL GANGER)」や「レスザン(LESSTHAN)」などのブランドを手掛けた安藤が15年にスタートさせたウィメンズブランドで、東京ファッション・ウイークでコレクションを発表するほか、ミュージシャンの衣装制作なども行っている。

 山下と安藤の2人が「ニード」を立ち上げた00年には、東京・神宮前の店舗で数量限定でコラボTシャツなどを扱っていたが、今年からは洋服の販売だけでなく、デザインユニットとしてプロデュースやディレクション業などの活動を始める予定だという。山下と安藤にブランド再始動について聞いた。(インタビューは2019年12月末に実施)

ブランド名に込められた“永遠に続くクリエイティブ”

WWD:2人の出会いのきっかけは?

安藤大春「ミドラ」デザイナー(以下、安藤):もう20年以上前の話なのですが、僕が「ドッペルゲンガー」というブランドを1997年にデビューさせたときに東京コレクションで活躍されていた先輩デザイナーとして憧れていたのが、「ビューティービースト」の山下さんでした。そこで、何かご一緒したいとラブコールを送ったのがきっかけで、一緒にリメイクなどの限定商品を販売したんです。

山下隆生「ビューティビースト」デザイナー(以下、山下):共通の友人にメンズモデルの市野世龍がいて、紹介してもらったんですよね。僕自身も90年代にはたくさんクリエイターとつながりを持って実験的なことを試していたときで、そういったカルチャーがある中で安藤さんに出会いました。

WWD:2人のコラボブランド「ニード」とは?20年前はブランドではどういう活動をしていたのか?

安藤:SNSもスマートフォンもなかったので、ネットの掲示板を使って情報を拡散し、神宮前の事務所で商品を作って販売していましたね。

山下:「ニード」は“ネバーエンドネバーデッド(NeverEnd EverDead)”という意味。「ファッションへのクリエイティブな活動は永遠に続く、終わりのない活動であり死ぬこともない」と、クリエイションを続けていくという共通の認識がお互いにあり立ち上げました。

WWD:「ニード」を復活させる理由は?

安藤:この20年間は、フェイスブック上で「誕生日おめでとうございます」や「あけましておめでとう」というメッセージを送り合うだけの関係だったんです(笑)。でも、「いつかまた山下さんと何か一緒にお仕事がしたい」という思いはずっとありました。山下さんは著名ブランドのディレクションをされているのでお忙しいだろうと諦めかけていましたが、20周年ということで思い切ってお話がしたいとランチにお誘いしたんです。

山下:再会して「この20年間、どうしていた?」という話になって、よかったことも苦しかったことも共有したんです。そうしてお互いのをもとに新しいことを一緒に動かせていけたらと、今回このようなアクションをすることを決めました。

付加価値を生むブランディングをユニットとして手掛けていく

WWD:具体的にどのような活動をする?

安藤:「ニード」というデザイナーユニットとして、モノを作って売る以外のことをしていきたい。例えば、デザインやグラフィックの依頼を受けたいですね。その中でもミュージシャンやメイクアップアーティストなどを巻き込んだプロジェクトなどにも広げていきたいと思います。

山下:そう、洋服だけにこだわらずにユニットとしてさまざまな活動していきたいですね。例えばヘアサロンって国内にたくさんありますが、今ブランディングが必要になってきていると思います。「ビューティービースト」でもライセンスでヘアサロンを展開していますが、他業種のブランディングでは、これまで培ってきたアパレルでブランドを立ち上げるときの発想とすごくリンクしているんです。音響や内装などの空間演出を組み立てるという発想で、一つのブランドを構築していくことができます。僕らの仕事は付加価値を生むことなので、その「付加価値=ブランディング」としてブランドの差別化を提案したいと思います。

WWD:プロジェクトの第1弾は、どのようなことを考えている?

安藤:プロデュースについては未定ですが、これから相談を受けていきたいと思っています。「ニード」の商品としてはパーカとTシャツを作り、1月に渋谷パルコで販売しました。今日僕らが着ているのがそうなんですが、山下さんとメールでやりとりしながら制作したものです。

山下:モチーフに使ったのは、1990年代に「ビューティービースト」の代表的な柄として打ち出していたデジタル迷彩。方眼用紙で一マス一マス塗りつぶして描いていて、ピクセルを表現した迷彩柄です。

WWD:山下さんは去年「ビューティビースト」を復活させたが、今後の計画は?

山下:「ビューティビースト」は来年30周年を迎えるんですが、ちょうど90年代に20代を過ごしていた方たちが、今家族を持ち、独立したり、起業したりと、立派な大人の男性になっています。今のアパレルは、「ユニクロ(UNIQLO)」などクオリティーが高くてコストコンシャスな洋服がたくさんあるんですが、自分の個性を発信できるような洋服を探す動きも出てきています。そういった方々にアプローチして、対話を始めたいと思っています。僕らは90年代にコンセプト重視のモノ作りをしてきたので、コンテンツとしてはすごく自信があるんですよ。その頃はセレクトショップのバイヤーさんのおかげで表現ができて、店を探してショッピングをする楽しみたいなのがあったんですけど、2000年以降はインターネットの時代でスマートフォンの中で面白いことが起こっている。その中でコンテンツとしてうまく表現できるような、何かプラットフォームっていうのを模索したいと思っているんです。

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