新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リアルイベントの中止を余儀なくされたスイスの時計見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」(旧「S.I.H.H.」)が、中央ヨーロッパ時間の25日12時(日本時間同19時)にデジタルプラットフォームを一般公開した。サイトでは、「カルティエ(CARTIER)」や「エルメス(HERMES)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」など17ブランドの新作時計や最高経営責任者の動画プレゼンテーションなどが閲覧できる。参加ブランドは今後数週間から数カ月の間に増え、さらに夏以降にECの創設も視野に入れるという。
デジタル化による大きな変更点は、見本市の対象がバイヤーやメディアに加えて“全ての消費者”に広がった点だ。これにより高級時計の分野もD2C(Direct to Consumer)が一気に加速すると考えられ、それは旧態依然とした見本市の形を脅かす存在になるかもしれない。
「WWDジャパン」委嘱ジャーナリストで同見本市を25年間取材してきた渋谷ヤスヒトは、「注目したのは、時計部門の責任者によるライブプレゼンテーション。動画内でしっかりと語られるブランドと、そういった試み自体がなく情報が非常にあっさりしているブランドに二極化し、“温度差”を感じた。ライブが定刻通りに始まらなかったり、サーバーがダウンしかけたりもしたが、初めてのことなので仕方がない」と言う。
米国発の時計デジタルメディア「ホディンキー(HODINKEE)」の日本版「ホディンキー・ジャパン」の関口優編集長は、「“中止”としていたにもかかわらず、『ウオッチ&ワンダー ジュネーブ』がデジタルプラットフォームを急ピッチで構築した点は評価したい。しかし、中身はまだまだ。各ブランドのオフィシャルページから脱し切れておらず、オリジナリティーがない。デジタルにおいても『ウオッチ&ワンダー ジュネーブ』らしさを期待したい」と話す。