2月14~18日に開催された2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK)に参加したブランドは、それぞれが打ち出す“都会的な女性”をメイクとヘアで表現していた。ナチュラル一辺倒だった前シーズンとは異なり、ラメを目元や口元に乗せて輝きを与えたメイクが斬新だ。今季バックステージ撮影を行った3ブランドのビューティの傾向を紹介する。
JW ANDERSON
“現実離れした気高く美しい女性”
デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が「ヌーボー・シック(新しいシック)」と表現した今季の「ジェイ ダブリュー アンダーソン」は、テクスチャーとシルエットに焦点を当てたルックが並んだ。そのコレクションに合わせてメイクアップを担当したリンジー・アレキサンダー(Lynsey Alexander)は、「現実離れした気高く美しい女性」を表現したと、同ブランドの公式インスタグラムで説明している。使用したのは「M・A・C」の製品。完璧なベースメイクに力を入れて、セミマットな質感で毛穴もムラも一切ないマネキン肌になるように整えた。アイブロウで眉毛の隙間を埋めてブラッシングを施し、自然体だが力強く主張する太眉を作った。メタリックにきらめくケミカル糸のルックのモデルには、生地のテクスチャーに合わせて大きめのラメを目元にのせて、ドレスに負けない輝きを与えていた。唇本来の色を生かすためか、口元はほとんど色をのせず、プルプルとした質感のリップグロスが光る程度。アンソニー・ターナー(Anthony Turner)によるヘアスタイリングは、「ロレアル(L’OREAL)」のジェルで前髪をしっかりと固めて、ランウエイを力強く歩いても乱れることのないフューチャリスティックなイメージに仕上げた。
TOGA
“都会をサバイバルする強い女性”
「トーガ」のメイクをリードした伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターは、「ダウンやパッファーなどアウトドアウエアの要素を含んだルックに合わせて、都会をサバイバルする強くクリーンでモダンな女性」だとイメージを説明した。スキンケアで素肌を整えた後、下地やハイライトとして使える「ティンテッドグロウブースター」をファンデーションとして使用し、肌に自然なパールのツヤと明るさを与えた。コンシーラーで部分的にカバーするだけで、ベースメイクは極めてナチュラル。「ブローパーフェクター」で眉毛を自然に整え、カラーメイクはほとんど加えていない。「トーガ」が描く“女性の強さ”を表現するため、7人のモデルの目元に黒色のアイシャドウでペイントのようなメイクを施した。ヘアはロンドンを拠点に活動する、エージェント「ストリーターズ(Streeters)」所属の高橋詩織が担当。まるでくせ毛のような自然体なウェーブは、髪を巻くのではなく、毛束をコテの表面に当ててゆるいウエーブを少しずつ作る手法だ。毛先に向かってストレートになるビーチウエーブ風で、ランウエイではふわふわと軽やかになびいていたのが印象的だった。
CHRISTOPHER KANE
“都会的な近未来の女性像”
エデンの園で繰り広げられる男性、女性、自然の三角関係を主軸に、性と自然をテーマにした「クリストファー ケイン」のコレクション。レースを使ったセクシュアルなルックが登場したが、ルーシア・ピエローニ(Lucia Pieroni)によるメイクは剥き出しの欲望ではなく、内側からにじみ出る色気を感じさせる仕上がりだ。「M・A・C」のファンデーションとコンシーラーで薄づきのナチュラルな肌はセミマットな質感に整えて、パウダーでハイライトを足していく。眉毛は下から上へと少し立ち上げるように流しながらアーチを描いた。ポイントとなったのは、目元と口元にのせた七色の大粒なラメ。ツヤツヤとした質感のベースやリップの上できらめく輝きは、PVCのカラーパーツを使ったアクセサリーやルックのディテールとリンクする。ヘアはグイド・パラオ(Guido Palau)がリードした。前髪のあるモデルは前に垂らして、その他はセンターパーツに分けて、「レッドケン(Redken)」の製品でツヤを与えながらしっかり固めていた。全体的に「クリストファー ケイン」らしい都会的でフューチャリスティックな女性像が浮かび上がった。