外出を手控えざるを得ない状況を受けて、おしゃれの“おうちシフト”が進んでいます。楽ちんな着心地の服を選べるのはうれしいのですが、以前ほどは着替える必要がないこともあって、マンネリ気味になることも。でも、コーディネートを少し工夫すれば、着映えやバリエーションが格段にアップ。自宅ライフにも自分らしさや張りが加わります。街中や職場ではためらってしまいそうな、ややクセのある着こなしだって、人目を気にせず試せるのが自宅ルックのいいところです。
たとえば、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」の2020年春夏のランウエイには、“HATE”(嫌い)に打ち消し線を重ねたニットトップスが登場。“嫌うことをやめて、受け入れていこう”という、前向きなメッセージは、今の空気感を代弁するかのよう。おうちルックなら、こういう主張にも共感を示しやすくなります。マリンルックにデビューするのも、家でならハードルが下がります。今回はニューヨークブランドの20年春夏コレクションから、自宅での装いに取り入れたくなる着こなしをセレクトしてみました。気分転換を兼ねて、自分好みのおしゃれを楽しんでみませんか。
◆大胆なアートモチーフからパワーをもらう
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パンチの効いたビッグモチーフは、おうちルックに元気感を上乗せしてくれます。「コーチ1941(COACH 1941)」のランウェイに登場した水原希子さんが着たのは、身頃いっぱいに描かれたフェイスイラストが目をひくニットトップス。歌手・女優のバーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)の顔は、映画監督であり、政治活動家でもある彼女へのオマージュを感じさせます。
自分の好きなミュージシャンやアーティストの肖像をまとうと、敬意が深まり、パワーまでもらえそう。Tシャツやスウエットで過ごすお部屋タイムにも、ワクワクした気持ちを呼び込めます。主役のビッグモチーフが目立つ分、残りのピースは割とシンプルで済むのも、コーデが楽な理由です。
◆ボーダーTはアクセサリー重ねづけで、うんとロマンティックに
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さっぱりとした見え具合のTシャツも、アクセサリーを添えるだけで、ぐっと華やぎが増します。Tシャツの着心地とレディーな雰囲気を両立させるアレンジです。「トリー バーチ(TORY BURCH)」はボーダーTシャツに、花コサージュとロングネックレスを重ね付けけしてドレッシーに格上げ。「シグネチャーロゴも正面で静かに主張します。
カジュアル気分のTシャツや部屋着にも、アクセサリーをちょっと多めに盛れば、気分が上がります。おしゃれに手を抜かないと、自宅でもモチベーションを保ちやすくなるものだから、“アクセ盛り”をお試しあれ。
◆基本のシャツ×パンツはパステルトーンでポジティブに格上げ
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ゆったりしたサイズ感のシャツやパンツは、リラックスしたいおうちタイムにぴったり。ただ、素っ気ない雰囲気にまとまりやすいので、色で表情を出していきましょう。「シンシア ローリー(CYNTHIA ROWLEY)」は、オーバーサイズ気味のシャツをワイドパンツにかぶせる感じでバサッと着る組み合わせを提案。色をパステルトーンで整えて、フレッシュ感やフェミニン度をアップ。
ポジティブ色を選ぶだけで、手抜きコーデから抜け出せます。上下それぞれ1枚ずつの“ワンツー”コーデだからこそ、色で工夫するのが賢いスタイリングです。
◆トレンドの透け感レイヤードで、涼やかにアップデート
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見栄えのする印象的なアイテムを1点だけ投入して、ムードを様変わりさせるのは、手軽に試しやすいアレンジです。透けるアイテムを使えば、さらに趣深い見え具合に。「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」は編み目のゆるいニットトップスを、キーアイテムに選びました。
プリント服の上から重ねて、柄を透けさせる演出。編み目越しのレイヤードが涼やかな着映えに導いています。部分的なカットアウト(くり抜き)を施したウエアでも使える、サマーレイヤードのテクニック。手持ち服の上から、透けるアイテムを重ねるだけで、ムードが様変わりします。
◆ロマンティックなラウンジウエア風で、のどかにリモート
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ラウンジウエア風の薄い羽織り物なら、おうちならではののんびり気分を邪魔しません。エアコンの風除け・温度調節にも役立つから、リモートワーク環境でのお仕事ルックにも組み込めます。「アナ スイ(ANNA SUI)」はパジャマのようなフリルワンピースの上から、ノスタルジックなガウン風の薄物を羽織って、落ち感を印象づけました。
締め付けレスな装いだから、仕事の能率も上がりそう。コンフォートとロマンティックを兼ね備えていて、ビデオ経由の息抜きトークや“家飲み”チャットにも使える着映えです。
他人の目を気にせずに済むから、おうちルックはむしろ本当の意味で、自分好みのおしゃれが楽しめます。これまで見送ってきたテイストも、この機会に「お試し」や「実験」のつもりでトライできるのも“ステイホーム”のよさ。居場所が限られ、気分がふさぎやすくなる環境を逆手に取るつもりで、いつもよりちょっとだけ遊び心のあるテイストを取り入れて、服から気持ちを盛り上げてみませんか。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い