「ジバンシィ(GIVENCHY)」は、セールの時期を遅らせることを要請する文書を小売店に送付した。これは新型コロナウイルスの影響でアパレルの縫製工場やサプライヤーが休業していたため、秋冬コレクションの生産が遅れ、店頭に並ぶ時期も例年より遅くなることを受けてのもの。
同文書によれば、「2020年ウィメンズ・プレ・フォール・コレクションは6月末に、20-21年秋冬メンズ・コレクションは8月末に、同ウィメンズ・コレクションは9月末に店頭に入荷する。これに伴い、春夏物の値下げ期間を7〜8月に、秋冬物については20年12月〜21年1月に移行したい。いずれは当ブランドの販売網全体にこのスケジュールを適用するが、米国の複数の大手小売店からすでに同意を得ているため、まずは米国から開始する」という。
「ジバンシィ」はこの文書について、「入荷スケジュールが例年とは異なるので、販売網におけるセール期間もそれに合わせてずらすために送付した」とコメントした。
ファッション業界では季節を先取りした商品を販売することが慣例となっており、春夏物は1月中旬から6月に、秋冬物は6月から9月初旬にかけて店頭に並ぶ。しかし今年は非常事態であることから、春夏物を9月中旬まで店に置き、秋冬物を9月下旬から10月頃に入荷するとしているブランドが多い。
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は春夏コレクションを通常よりも長く店頭に置き、秋冬コレクションの一部に含めるという。また「シャネル(CHANEL)」や「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「アルマーニ(ARMANI)」なども、やはり秋冬物の入荷が遅れることから、春夏物を長く店頭に並べることを発表している。中でもジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は値下げをすること自体にも言及し、「商品の数を絞り、顧客の季節的なニーズに合わせてコレクションを作るのが理想的だ。そうすれば値下げをしなくてすむし、するにしてもごく限られた範囲ですむ」と最近のインタビューで語っている。
百貨店では、米国のサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)が同様の取り組みを開始した。「バーバリー(BURBERRY)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」などを含む20の主要ブランドと話し合い、実際の季節に合わせて商品が店頭に並ぶようにしたという。しかし、これに伴ってセール期間がどうなるのかについては明らかにしていない。
一方で、ラグジュアリー専門のECではすでに20年春夏コレクションのセールを行っているところもある。イギリスの高級ECサイト「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」、そしてイタリア発のセレクトショップであるルイーザヴィアローマ(LUISAVIAROMA)やアントニア(ANTONIA)が運営するECサイトなどでは15〜50%引きのセールを実施している。
複数のブランドを取り扱っているという小売店は、「春夏物のセール期間について、欧米のさまざまなブランドから要望が来ている。5月末から7月初旬を希望するケースが多いが、こんなことは今までなかったので、多少の混乱がありそうだ」と匿名を条件にコメントした。