イタリアのジュゼッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相は26日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて7週間続けてきた規制を5月4日から緩和する方針を発表した。これまで食品や医療品などの生活必需品以外の全産業の生産活動を停止してきたが、この緩和で多くのテキスタイルメーカーの工場も再稼働する。
比較的感染被害が少ないエリアでは、4月14日の再稼働を目指して政府機関と折衝を行うなどの動きもあった。
東レの子会社でテクニカルスエードを手掛けるアルカンターラ(ALCANTARA)は4月14日、ウンブリア州ネラ・モントロにある工場を厳重な態勢を整備を厳重な態勢整備とともに再稼働していた。4月21日からは、さらに強化したトリアージエリア(症状に応じて患者を選別する区域)を設けて、希望する従業員には通勤の車内にいながらにして血清(抗体)検査を実施。約5分で検査結果が分かるという。また、毎日約500人の従業員にマスク、手袋、ゴーグルを工場の入り口で渡すほか、定期的に従業員の体温測定も行っている。
アンドレア・ボラーニョ(Andrea Boragno)会長兼最高経営責任者CEOは、「感染封じ込めとソーシャル・ディスタンシングへの対応は数カ月続くだろう。現在の緊急態勢がどれくらい続くかはわからないが、中長期的に工場を完全閉鎖することは現実的ではない」とし、「すべてのウンブリア州の市民、そしてすべての従業員の健康を守るため、今回さらに(トリアージエリアエリアを設けるなど)対策の実施を決定した。この対応により、企業と社員をパンデミックによる経済的な被害から防ぐことができると考えている」とコメントを発表した。同社は現在マスクの開発も行っており、ネラ・モントロの工場では量産化を検討しているということで、所轄官庁で認証され次第、生産を開始する予定だ。
八木通商が生地を輸入しているイタリアのテキスタイルメーカー7社のうちの6社も段階的に再稼働している。八木通商の山本隆至エージェシーディヴィジョン課長は、「製造業、建設業、卸売業において安全指針を守れる範囲で5月4日の再稼働が可能になったと伊政府から発表があったが、中でも国の重要産業である繊維と自動車は4月27日から段階的に安全を確保できる範囲で再開してもいいと発表された。生産地の州単位・企業単位で政府と折衝を重ねて再稼働に漕ぎつけたようだ」と語る。
同社の取引先のテキスタイルメーカーの再稼働スケジュールは、ヴィエラ地区のピエモンテーゼ(PIEMONTESE)、プラト―地区のポンテトルト(PONTETORTO)、ベネト州ヴィヴェンザ地区のマルゾット・ウールのG.Bコンテ(G.B.CONTE ESTHETIA DIV OF MARZOTTO WOOL)はすでに再稼働している。そのほかのプラト―地区のミリオール(MILIOR)、ヴィエラ地区のフェルラ(FERLA)、カルロバルベラ(CARLO BARBERA、出荷のみすでに対応中)は現在各機械のセッティングや試運転の段階で、生産計画を練り直して本格稼働は5月4日を予定。ベネト州トレヴィーゾ地区のパオレッティ(PAOLETTI)も5月4日の再稼働を予定している。
山本課長は「この政府方針によって変化があると考えられる。状況によっては予定の変更もあるものと思われるが、いい方向に進むことを願っている」と語った。