専門店チェーン、セレクトショップの2020年4月度の売上高(既存店ベース)は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、未曽有の大幅減となっている。ファッションやインテリア関連の小売りは休業要請対象には入っていないが、ファッションビル、ショッピングモールは軒並み休業しており、その影響が大きい。一方で、郊外ロードサイド店舗などで感染防止対策のもと営業を続けた企業の傷は比較的浅い。特に、リモートワークによるインテリア特需も後押ししたニトリは、3月21日~4月20日の期間で前年同期比4.0%減の落ち込みに抑えている。
ニトリは4月20日時点で、全545店舗中99店が休業、426店で営業時間短縮を実施していたが、「全国的なリモートワーク推奨によりホームオフィス家具需要が高まった」ことなどで、既存店売上高は前述の通り同4.0%減、既存店客数は同1.0%減と健闘。ただし、16日に緊急事態宣言が全国に拡大されたため、4月末までの数字になるとこれ以下に落ち込んでいる可能性はある。とは言え、まさに「不況こそチャンス」(似鳥昭雄ニトリホールディングス会長兼CEO)を地で行っている状況だ。一方で、店頭が混雑し感染リスクが高まっていることから、販売員による休業を要望する声もSNSには出ている。これに対しては、「感染対策や営業時間短縮などをしっかり行い、販売員やお客さまの安全確保に努めている」(広報担当者)。
しまむらの基幹業態「ファッションセンターしまむら」も、ニトリ同様3月21日~4月20日の集計で既存店売上高は同28.1%減だった。休業店舗は5月7日時点で全1432店中26店。ファッション商品は不振だったものの、衛生用品やハンカチ、ルームウエア、玩具、寝具、タオル等がけん引した。「16日に緊急事態宣言が全国に拡大して以降は、同50%減前後まで落ち込み厳しくなったが、ゴールデンウイークに入ってからは気温も高く、やや盛り返した」(広報担当者)という。
ユニクロ(4月1~30日)の国内既存店とECの売上高は、同56.5%減。約820店中、4月は最大で311店が休業、299店で営業時短を実施した。5月7日時点では休業が261店にまで減り、営業時短が349店となっている。「店頭にいらしたお客さまには春夏の新商品が好調」(広報担当者)で、客単価は同10.4%増。ウィメンズはワッシャーサテンスカートパンツ、メンズはウルトラストレッチジョガーパンツ、肌にあたる面が“エアリズム”になったコットンTシャツ、UVカット機能のコットンTシャツなどが売れ筋となった。「ECも新規客の流入や休眠客の再開でとても順調」だ。
ロードサイドに店舗がなく、ファッションビルやショッピングモールへの出店が主となっている企業は非常に苦しい。ユナイテッドアローズ(UA、同)の小売りとECの既存店売上高は同62.4%減と落ち込んだ。全242店中、8日から179店を休業。順次休業店は増え、「4月末時点の営業店舗はアウトレット1店舗のみ」(広報担当者)という戦いになった。5月7日時点では6店が営業している。自社EC売上高は同92.8%増となったが、4月下旬から最大70%引きのセールを開始した効果が大きく、利益率は厳しい。他社ECモールなども含めたEC売り上げ全体は同25.0%増。「今後もセールはある程度継続していく見込み」だ。
アダストリア(同)の既存店売上は同67.8%減。8日から国内約1240店中半数で休業、4月末時点で全店が休業となった。「EC販売は同20%増」(広報担当者)と、20年2月期のEC売上高伸長率(前期比16%増)を超えるペースでの推移となったものの、セールも多数行っており、利益率はUA同様厳しい状況だ。