新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け休業を延長する商業施設も多く、ビューティ企業も同様だ。営業を行っている店舗においても、感染防止のためマスク着用、消毒の徹底、タッチアップの自粛を継続する。ビューティ企業において、接客は最大の武器だっただけに、その基盤が揺らぐ今の状況に頭を抱えている企業も少なくないだろう。その打開策はやはり、デジタルの活用にほかならない。これまでもデジタル上での相談窓口はあったが、今回の特徴は店頭の美容部員と顧客を結びつけていることだ。この新たな“接客”はコロナ後にも一つの“接客”の形として定着するのではないだろうか。
コーセーは美容部員が商品の紹介画像を投稿
コーセーは、実店舗の販売スタッフがメイクやスキンケア商品の紹介画像を投稿できるアプリケーションサービス「スタッフスタート」を総合美容情報サイト「メゾン コーセー」に導入した。バニッシュ・スタンダードが手掛ける同アプリケーションサービスはこれまでアパレル業界では800以上のブランドで活用されているが、化粧品業界では初めてとなる。
店頭の美容部員がメイク画像、スキンケアアイテムの紹介画像の投稿などを公開。「年代(20、30、40、50、60代)」「肌質(普通肌、乾燥肌、脂性肌、混合肌、敏感肌)」「肌色(ブルーベース、イエローベース)」「まぶたのタイプ(一重、二重、奥二重)」の情報を記載することで、顧客は自分の肌の特徴や顔立ちに合った美容部員のメイク投稿を参考に商品を選択することが可能だ。スキンケアアイテムも、それぞれの肌質に合った商品の使用感やポイントをレビューし情報を提供、購入につなげる。
実際の美容部員が出ることで、美容部員にファンがつくことも考えられ、美容部員のモチベーションアップにもつながる。芸能人やモデル、インフルエンサーではない、身近な存在の美容部員の“言葉”に共感を得てもらいファンを獲得。そのファンがコロナ後に店頭に足を運ぶことも予想される。
有人チャットサービスを導入したオルビス
オルビスは、サイバーエージェントの子会社のエーアイシフトが提供する有人チャットサービスを導入し、自社EC内のAIチャットサポートでビューティアドバイザーによる有人チャットサービスを期間限定で展開している(実施期間は未定)。外出自粛が続く中、いつものように店頭で相談しながら買い物ができない顧客に向け、オンライン上で気軽にビューティアドバイザー(BA)に質問、相談することを可能とした買い物体験を提供するというものだ。
BAは休業中の店舗から募集をかけて有志を募り、東京、大阪、福岡と全国から手が挙がった。休業中のBAにとっても、自宅にいながらお客の質問に答えるといった“接客”は、顧客との新しい形の結びつきを生み出しているといい、こちらもモチベーションアップにつながっている。
また同社はGW限定でインスタストーリーズで予約フォームを案内してZOOMのオンラインカウンセリングを実施。オンラインカウンセリングに最初は緊張していた顧客も会話が弾むに連れ積極的な質問にもつながり、また子どもを持つ人からも好評だったことから、今後の実施も検討していくという。また同社では今後、BAの活躍の場の創出など露出を増やしていくことも検討し、スターBAを作っていく考えだ。
こういったデジタルを活用した“接客”は、今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、コロナが終息するとは言いがたく、日常をソーシャル・ディスタンシングにしていく中で、美容部員を軸とした新しい形のオムニチャネル戦略として一つの導線になりそうだ。さらにはファッション業界では多く存在するスター販売員のビューティ版、スター美容部員がこういったデジタルの“接客”から生まれてくることにも期待したい。