新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2019年からパリでの発表を続けている「キディル(KIDILL)」の末安弘明デザイナーが、苦境の中でもインディペンデントを貫く強い思いを語った。
KIDILL
末安弘明デザイナー
Q.今、デザイナーができることは?
A.この1カ月で世界が一変してしまい、今後はこれまでとは全く違う状況になってくる。自粛ムードが強くなるにつれて活動ができない人が増え、生きるか死ぬかのギリギリの状況になり始めている。現状は政府からの十分な補助金も期待できず、「キディル」も来年に終了している可能性だって十分に考えられる。でも僕はファッションや音楽や映画や飲食など、あらゆる文化に影響を受け、救われながら生きてこられた。だから絶対にここで終わるわけにはいかない。“PUNK'S NOT DEAD”ではないけれど、同じ意志を持って活動している友人や仲間と共にできることは多くあるはずだ。このパンデミックであらためて気づかされたのだが、有名人が着ているとか、何億円売り上げているとか、そういうことでなく、僕は純粋に服を作って生きていくことが楽しいし、それが自分の全てだということ。その場所を守るために、自分たちから発信しなければならない。
【自社での動き】
「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」が立ち上げたプロジェクト「#CONNECT TO THE FUTURE」に参加し、品薄状態が続いているアルコールハンドジェルと口腔ケア用歯ブラシを製作。「ヴァイタルマテリアル」は販売収益でアルコールハンドジェルを増産し、保育施設など各施設に寄付する。5月17日まで「ヴァイタルマテリアル」の公式サイトで販売・受注を行っている。