【追記5月11日】一部の都道府県を除き緊急事態解除の動きが広がってきた現状を踏まえ、署名活動の発起人である青田社長らは、要望の1つとして掲げていた「ファッション小売りの休業要請対象業種への追加」を5月10日時点で取り下げ、代わって店を開けてからの「ファッション業界も含めたさらなる経済活性化刺激策の予算化」を要望に加えました。
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、ファッション関連の小売業の多くは休業状態にある。5月4日に緊急事態宣言が月末まで延長され、中小規模の企業はいよいよ資金繰りがひっ迫してきた。ファッション小売りは休業要請対象に指定されておらず、補償のない自主休業となっていることから、「ファッション産業は政治に見放されている」といったコメントも業界内からは出てきている。こうした状況を変えるために、署名活動がスタートした。オンライン署名収集サイトのChange.org上で署名ができる。
発起人は、シューズブランド「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長や、有力ブランドを抱えるセールスレップのイーストランド島田昌彦社長、セレクトショップ「ミッドウエスト(MIDWEST)」大澤武徳副社長、福岡発のセレクトショップ「マギークープ(MOGGIE CO-OP)」三浦ふさこ社長など。
青田社長らは緊急事態宣言の延長と前後して、小池百合子東京都知事や安倍晋三首相らに陳情を行っている。そこで要望としたのは、「①ファッション小売りの休業要請対象業種への追加、②資金繰り支援(貸付)支給の迅速化、③雇用調整助成金の支給の迅速化と上限額のアップ、④物件賃料の一部補助」など。8日午前に公開した署名サイトでも同内容を要望として掲げており、賛同者を募って声をあげていく。サイトは公開後約4時間の時点で500人超の署名が集まっており、ファッション小売業だけでなく、クリーニング業など関連産業従事者からも賛同コメントが寄せられている。
「WWDジャパンドットコム」では、今回の署名活動に関連した青田社長のインタビューを5月4日に掲載したが、配信先ニュースサイトのコメント欄などでは、「ファッション小売りは休業要請対象業種ではないのだから、苦しいのなら補償を求めるのではなく、店を開けて自由に商売をすればよい」といった声もあがっている。「従業員とお客さまの安全を優先するという考えで休業に協力している。店を開けたとしても、『なぜ自粛に協力しないのか』と非難され、従業員が危険な目に遭うかもしれない。商業施設内のテナント店舗は、施設が閉まったことで、有無を言わさず休業になったケースもある」(青田社長)と、事態はそんな簡単なものでもない。
そうは言っても、「財源が限られている中で特定の業種への補償を求めても、業界外の方からは賛同を得づらい」(青田社長)ということも理解している。だからこそ、業界を限らない貸付や助成金なども活用しながら(要望②③)、「賃貸事業者への補償(要望④)など、今既に示されている補償案からは抜け落ちているものを要望している」。ファッション小売りの最大の懸念点だと青田社長が話すのが在庫だ。「他業界も苦しいことはよく理解しているが、われわれの業界は数日分の在庫ではなく半年分の在庫を抱えており、しかもその在庫には鮮度がある。多くの店が店を開け、なんとか在庫を処分するためにセールをすることになったら、“3密”を招いて感染拡大につながりかねない。だからこそ、休業要請への指定(要望①)が必要」と繰り返す。
集まった署名をどこに、どのように届けるのかといったことは順次発表していく。