新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、物怖じしない精神力とビジネスについての明確な視点を持つ「サルバム(SULVAM)」の藤田哲平デザイナーが、過渡期のファッション業界に物申す。
SULVAM
藤田哲平デザイナー
Q.今、デザイナーができることは?
A.時代を反映するのと同時に、暗い状況下でも時代を明るくすることができる――それがファッションであり、僕たち服屋の仕事だ。今、特に日本に山ほどいる“軽い”デザイナーたちは1、2年後にはいなくなっているだろう。この社会状況でも生き残り、伝えていくのはデザイナーだけでなく、店も同様だ。自分の好きなことをして生きていけている僕らのような人間は、責任を負えないならやめるべき。どんな状況下でも服しか作れないからこそ、この仕事で食べている。だから今は、きれいごとではなく、対策よりも命そのものを守りたい。当たり前が当たり前ではないこと。自分を守り、大切な人を守ること――何よりこれだけだと思う。
ただ、僕もマスクを生産して配布したいと考え、医療機関で使用されている素材を手配しようした。しかし医療的に効果のある素材は調達が困難という現実に直面し、ふがいない気持ちだ。自分でマスクを作って配布するなら、ある程度抗菌作用がある素材にこだわりたかった。今は、多くのブランドが残反でマスクを作り始めている。残反で作ったうえに販売までしているのは、正直、同じデザイナーとして嫌気がさす。止まっている縫製工場のためにと考えているのかもしれないが、「残反で作って売るなよ」という感じ。というのも、ブランドの価値が安くなってしまう気がするから、このビジネスはやめた方がいい。