ロコンドの株価が上昇している。きっかけは人気ユーチューバーのヒカルとのコラボレーションだ。4月2日の夕方にヒカルのブランド「リザード(REZARD)」とコラボレーションしたシューズを販売すると、夜中にサーバーダウンになるなど祭り状態に。翌日の株価は一時期ストップ高となる17.02%も上昇。その後もシューズの追加や雨上がり決死隊の宮迫博之も巻き込んだテレビCM放映などのイベントを連発したことで、株価は上昇を続け、7日には一時、年初来で最高値となる1275円を付けた。ユーチューブは、ロコンドの成長を後押しする起爆剤になるのか。
ロコンドが4月14日に発表した20年2月期業績は、商品取扱高(GMV、*返品後)が前期比29.5%増の182億円、売上高は同27.8%増の85億円と増加したものの、営業損益は8300万円の赤字(前期は9億8000万円の赤字)、経常損益は7700万円の赤字(前期は8億6200万円の赤字)、純損益は2億5600万円の赤字(前期は4億6400万円の赤字)だった。年初に掲げていたGMV225億円、営業利益トントンという目標は、暖冬に伴う消費不振と暖冬に伴う消費不振と昨年3月に買収したモバコレの減損などで、大幅な下振れを余儀なくされた。新年度である21年2月期も新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛は、主力アイテムのシューズ販売に大きな影響を与えており、田中社長も「4月は全般的に厳しかった」と語っている。
にもかかわらず株価が上昇しているのは、田中社長が新事業の柱として位置づけるユーチューバーのヒカルを筆頭に、インフルエンサーとコラボレーションして立ち上げるD2C事業が、当初の想定以上に好調に推移しているためだ。
ヒカルとのコラボアイテムは1万2800円と1万3500円のスニーカーと9800円のサンダルというわずか3型だったにもかかわらず、チャンネル登録者数380万人を要するヒカルが自身のユーチューブやツイッターなどで積極的にPR活動を行うと、ロコンドは2度にわたり、サーバーがダウン。さらにはお笑いの宮迫も絡んだテレビCMの有無も絡めたイベントに発展、田中社長自身もたびたび登場し、“祭り”状態になった。
マッキンゼー出身で名門の米バークレーのMBA資格を持ちながら、人気ユーチューバーのヒカルとの掛け合いにも臆さず出演し、タブーとされてきた宮迫のテレビ出演にも手を貸す、こうした一連の活動こそが、“トリックスター”であるロコンド田中社長の真骨頂だ。自社で構築してきたITシステムや自社倉庫を無料、あるいは廉価で外部に開放するオープンプラットフォーム構想は、従来のビジネスモデルをディスラプション(破壊)する威力を秘めると同時に、ネット通販最大の課題である在庫を集め、本丸である通販サイト「ロコンド」の取扱高を伸ばす意味もある。ヒカルやスザンヌと取り組むD2C事業も、2018年10月に婦人靴卸の三鈴商事(今年3月に吸収)、今年4月には同じく婦人靴卸のサン・トロペを買収しており、シューズの企画生産機能を内製化してきた賜物と言える。
ロコンドが背中を追いかけるファッションECの巨人ZOZOも創業者の前澤友作氏がツイッターで662万フォロワーを抱え、マスコミ以上に自身のSNSを情報発信の重要なツールとして活用していた。その前澤氏も昨年9月に電撃引退。ユーチューブで新たな成長戦略を描く、ファッションEC界の“トリックスター”、ロコンド田中社長は新たな道を切り開けるか。