企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はH&Mの決算から同社の課題を前後編で解説する。(この記事はWWDジャパン2020年5月11日号からの抜粋です)
今回は世界第2位のSPA企業、H&Mの決算を見ていきます。すでに3〜5月期は赤字を予定するなど新型コロナウイルスによる打撃を強く受けていますが、実はその前から業績の問題を抱えていたようです。
H&Mの売上高と営業利益、
店舗数の推移
例によって前年比ではなく、中長期スパンで見てみます。まず、2009年からの決算の数字を見ると、15年11月期に営業利益額のピークを迎えています。つまりブランドのライフサイクル理論(19年6月10日号)からいうとピークアウトしてしまっています。そこから3年連続で減益です。19年は増益でしたが、ピーク時はもちろん10年前と比べても届いてないです。10年で売り上げは倍以上に増えていますが、営業利益はなんと8掛け。19年11月期だけを見ると増収増益で良いように見えますが、これが実態です。では、一体何が起こったのでしょうか?理由は大きく3つあると考えています。
まず1つは拡大戦略にあります。ヨーロッパの企業は自国のマーケットだけでは限界があるので、基本的にグローバルでなければいけません。イケアもそうですが、スウェーデン拠点の企業は向かい側のドイツで稼いでるケースが多いですね。スウェーデンと北欧とドイツ周辺で稼ぐために、アジアで商品調達をして、コストを安くして、バリューがある商品を販売するというのがイケアとH&Mの共通点です。
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