三越伊勢丹ホールディングスの2020年3月期連結業績は、売上高が前期比6.5%減の1兆1191億円、営業利益が同46.4%減の156億円、純損益が111億円の赤字(前期は134億円の黒字)だった。主力の百貨店事業において、下期(10~3月)の消費増税の反動減、暖冬に加え、新型コロナウイルスによる販売不振、時短営業が追い打ちを掛けた。21年3月期は新型コロナの影響が長引くとみて、来店客減を前提としたEC強化に取り組む。
20年3月期の百貨店事業の売上高は前期比6.8%減の1兆355億円、営業利益が同85.6%減の22億円だった。減収要因は、新型コロナウイルス影響に伴う販売不振(419億円)を最大に、暖冬による不振(214億円)、閉店やリニューアルによる売り場閉鎖(193億円)、消費増税の反動減(68億円)など。
当期は伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越など地方の不採算店舗を閉店。一方、経営資源を集中する首都圏の基幹店の改装を進めた。伊勢丹新宿本店本館は婦人靴、ジュエリー(8月)のほか、1~2階にメイクアップ・スキンケアのフロアを改装(11月)した。三越日本橋本店はエントリー層の獲得とおもてなしの強化を主眼に時計、ジュエリーのギャラリーをテコ入れした。これら基幹店の改装により、96億円の増収効果があった。
21年3月期業績予想は、新型コロナの影響で見通しが立たないとして公表を見送った。4月7日の「緊急事態宣言」発効と16日の全国拡大以降はグループ全店を休業しており(一部は食品フロアを営業)、三越伊勢丹の4月の既存店売上高は前年同月に比べて90.2%減と深刻な打撃を受けている。一方、政府は今月14日をメドに、特定警戒都道府県を除いた地域の宣言の解除も視野に入れている。これを受け、「(宣言が)解除された地域では、速やかに営業を再開させていく」(杉江俊彦社長)方針。
ただ新型コロナによる影響は今後も長引くとみて、決算会見ではグループ業績への1カ月当たりのマイナスインパクトを試算し公表した。試算によると、全店で営業再開しても外出自粛要請が続けば、売上高は30~40%、利益は30億~40億円のマイナス。要請が解かれた場合でも景気低迷が続くと、売上高で10~20%、利益面では最大で10億円のマイナスとみる。さらに、入店者の検温や店内環境整備などウイルス対策費用10億~15億円を見積もる。
これらのマイナスを見込み、今期は店舗リニューアルや不動産開発などの投資は絞り込む。また、デジタル施策も見直す。「(コロナの影響で)実店舗に来るお客さま自体が減っていくだろう。これまで、店舗を前提に強化してきたオンラインとのシームレス化とは別軸で、EC単体での強化にも取り組む」。6月にはECや店舗受け取りなどさまざまな機能を集約した「三越伊勢丹アプリ」をリリースするが、これにおいても「なるべく早く、デジタル上で接客する仕組みを盛り込みたい」とする。