英国ブランド「マルベリー(MULBERRY)」は5月20日から、同ブランドの商品価格を全世界で統一するグローバルプライシングを導入する。直営と卸を含めて、英国での販売価格を基準に各地の消費税や関税を考慮した統一価格に設定。現在ブランドの売り上げの約90%を占めるレザーグッズから適用し、順次カテゴリーを広げていく。
ラグジュアリーブランドの内外価格差は近年、ブランドの公式ECや越境ラグジュアリーECモールの定着で目立つようになった。販路が増える一方で、価格の差が見えることがデメリットになることもあったが、リアル店舗とオンライン上、国内外での価格のばらつきをなくすことで公平性を確保することができる。
また新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中長期的に海外旅行の機会が減ることが見込まれる上でも、同一価格になることは消費者とブランドにもプラスになる。
現在「マルベリー」の日本国内の直営店は8店舗で、セレクトショップなど卸先件数は8件だが、現在世界的に直営ビジネスを強化しており、売り上げ全体の95%を占める。ティエリー・アンドレッタ(Thierry Andretta)=マルベリー最高経営責任者(CEO)に同一価格を導入する狙いを聞いた。
WWD:グローバルプライシングの導入を決めた理由は?
ティエリー・アンドレッタ=マルベリーCEO(以下、アンドレッタ):「マルベリー」はオムニチャネル戦略を推進する中で商品を世界中どこでも同価格でお客さまに提供し、オープンで透明性のある事業運営をグローバルの販売網で行っていきたい。昨年11月に発売した「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」とのコラボレーションを皮切りに世界統一価格を一部的に実施し、ポジティブな評価を得ている。
WWD:これまで「マルベリー」の本拠地である英国と他国ではどの程度の内外価格差が発生していたのか?
アンドレッタ:「マルベリー」の内外価格差はもともと低く設定されていた。マーケットでは30%程度の差があるケースもあるが、当社では消費税、関税の差にとどめてきた。
世界統一価格は今後、ファッション業界の標準になる
WWD:価格はどのようにコントロールするのか?
アンドレッタ:グローバル価格が英国価格と同一になるように、各地の消費税や関税を含めた価格に設定する。他のラグジュアリーブランド同様、為替、原材料および人件費の変動を考慮した価格の見直しはシーズンごとに行っていく予定だ。全体の95%が直営である今、価格のコントロールはとてもスムーズに進めることができている。
WWD:ファッション業界全体を見て、内外価格差を見直す動きは出てきているのか?
アンドレッタ:世界統一価格は今後、ファッション業界では標準になると考えている。私たち「マルベリー」は先駆者として、この取り組みをけん引していきたい。ウイルスの影響で、旅行者が減少していく中、国内及びデジタルでのショッピングが必要とされる。その中で世界共通の価格を提示することが今まで以上に重要になるだろう。
WWD:ウィズコロナ時代は店舗に足を運ぶ機会が減り、ECを含むデジタル強化が必須になっていきそうだ。
アンドレッタ:「マルベリー」はしっかりとしたデジタルとのオムニチャンネルの基盤があるため、カスタマーの動向に合わせて迅速にアクションを起こすことができる。対社会の動きとしては、慈善団体ナショナル・エマージェンシーズ・トラスト(National Emergencies Trust)とパートナーシップを結び、新型コロナウイルス影響へ向けた基金を立ち上げ、ローカルコミュニティーをサポートしている。本国イギリスにおけるオンライン売り上げの15%と、私たちのコミュニティーからの寄付を合わせ、現段階で7万5000ポンド(約990万円)を超える寄付金を集めた。また、自社工場では地元の病院のために繰り返し使用可能なPPE(医療用防護服)ガウンの生産を開始した。最前線でウイルスと闘っている医療従事者に向けて数週間で8000着以上のガウンを納品した。