新型コロナウイルス感染拡大で最初に経済打撃を受けた中国の化粧品市場が3月くらいから復調の兆しをみせている。国内大手化粧品企業の直近の決算を見てもその傾向が見受けられた。各社に3月~5月6日までの中国の商況を聞くと大勢が前年を上回る実績を上げた。(この記事は「WWDビューティ」5月14日号からの抜粋に加筆しています。)
資生堂は2月24日から中国オフィスの業務を再開。店頭も通常営業(一部店舗を除く)を開始した。その中で「eコマースを中心に力強く回復した(1~3月度の売上高は前年同期比25%増)」(同社)という。特に3月8日の婦人節(国際女性デー)商戦でプロモーションを強めた結果、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「NARS」などが伸長し、3月度のプレステージブランドの売上高は前年同月比60%増となった。百貨店に勤務する美容スタッフが商品説明などをするライブストリーミングの取り組みを強めたことでeコマースや店頭での購入が拡大し、4月度もコロナ禍前の高い成長率に回復した。「今後はこうしたO2O施策を日本でも導入する予定で、デジタルを駆使した事業モデルへとシフトする」と述べた。
コーセーは、オンライン・オフラインともに売上高が前年を上回り順調に推移した。「現在は休業していた店舗の多くが再開し、オンライン・オフラインともに実績はもとのトレンドに戻りつつある」(同社広報)という。好調な製品はコロナ禍前と変わらず「コスメデコルテ」の化粧液「モイスチュア リポソーム」や乳液「プリムラテ」、化粧水「ヴィタ ドレーブ」など。今後も「中国市場および免税市場においては、引き続きオフライン・オンラインともに強化する。高成長が続く『コスメデコルテ』に加え、『雪肌精みやび』などハイプレステージブランドを中心に育成するとともに、免税店やeコマースをはじめとする新販路の開拓を強化し、グローバルかつボーダレスなお客さまづくりを図る。オフラインにおいては、売り上げ比率が急速に高まっているTモールを有するアリババグループとの協業によるEC事業売り上げの加速と、OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略へのトライを検討していく」と述べた。そのほか、免税店や機内、宿泊施設での訪日観光客への立体的なアプローチも行う。
花王とカネボウ化粧品は、リアル流通はまだ回復していないもののECが好調。花王中国は3月に入り回復し始め、売り上げは伸長している。カテゴリー別では、メイクの売り上げが下がっている一方でスキンケアの売り上げがけん引し、トータルで前年同期比2ケタ伸長だ。「投資をECにシフトしたことが奏功している。3月初旬にTモールの旗艦店で著名なKOLを起用した生放送配信を実施するなどECでの販促強化を行ったことにより、『フリープラス』のクリーム状洗顔料『マイルドソープa』、ミスト状化粧水『マイルドシャワー』、『アリィー』の日焼け止めが好調」(同社広報)とコメント。引き続き、生放送などEC施策を強化していく予定だ。
ポーラ・オルビスホールディングスは、主力ブランドの「ポーラ」の売上高が前年を越え6億8000万円となった。好調の背景を「中国ではコロナが収束傾向にあるため、それに伴い復調している」(同社広報)と分析する。好調な製品は以前と変わらず「B.A」シリーズだという。そのほかの取り組みとしては、KOLを使ったPRだけでなく、販売員も直接ライブ配信を行うことによって既存の顧客のフォローを実施し始めた。「中国市場では、KOLだけではなくユーザーの使用動画のシェアなど、動画配信の共有アプリなども多い。ターゲットが情報収集によく使っているアプリやプラットフォーム内でのライブ配信機能を活用し、各商品の正しい使用方法や効果、そしてブランドの背景や思想に関する発信についても合わせて拡充していく予定」。さらに、eコマースで商品を購入した人に関してもリアル店舗のワークショップイベントへの参加招待などO2Oの施策も視野に入れている。
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