横編機大手の島精機製作所の2020年3月期決算は、売上高が前期比35.3%減の332億円、営業損益が56億円の赤字(前期は46億円の黒字)、経常損益が55億円の赤字(同49億円の黒字)、純損益が84億円の赤字(同38億円の黒字)になった。赤字転落は12年3月期以来の8年ぶりで、赤字幅は過去最大。同社は売上高の大半を海外で稼ぎ、大手スポーツブランドと組み、ニットスニーカーの開発をリードした横編機の世界的なリーディングカンパニーだが、数年続く暖冬により主力のセーター向け汎用機が苦戦した上、今年1−3月には最大の売り先である中国で新型コロナウイルスが直撃した。島三博社長は13日の会見で、「中国、欧州、中東、アジア、日本の全地域で売り上げが減少した。コロナ以前から全世界的にアパレル生産は落ち込んでいたが、世界中でコロナにより設備投資は全面的にストップしている。現時点ではどう動くかは見通せない」と語った。21年3月期の業績見通しは非公表になる。
営業損益ベースでは19年1〜3月から赤字に転落、20年3月期に入ってからも世界的な衣料品市況の悪化で、2度の下方修正に追い込まれるなど、全四半期で赤字になった。「年明けの1月に欧州を中心にようやく上向く兆しが見えたものの、新型コロナで吹き飛んだ。中国では現地法人や営業所は一部で再開し、中国国内向けの需要は上向いているものの、欧米向けが依然としてストップしており、現時点では先の見通しはまるで立たない」
20年3月期の編み機全体の販売台数は5117台、そのうち最新鋭の「ホールガーメント(WHOLE GARMENT、以下WG)」機は1026台だった。売上高は2年連続で大幅な減収になっており、ピーク時の18年3月期と比べると売上高は半分以下、編み機の販売台数では3分の1に落ち込んでいる。島社長は「いわゆるファストファッションのような低価格のセーターに関しては、中国企業製のニット機に競り負けた。今後はWG機のような新鋭機の販売と開発に注力していく」と語り、現在全体の2割を占める「WG」機の割合をさらに高めていく。
設備投資は20年3月期が38億円、研究開発費が36億円だったが、21年3月期は設備投資を20億円程度に抑えるものの、研究開発費は前年並みと高水準を維持する。「非アパレル分野向けの開発の進捗はコロナ下でもほとんど止まっておらず、むしろリソースを集中投下できたことでスピードはアップした。アパレルを含めた全体的な研究開発でも、『WG』機のようなハードウエアとデザインシステムなどのソフトウエア、さらにはその周辺も含めたネットワーク化などの開発は加速し、21年3月期のうちに新製品を発表したい」という。