新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、自身の「ファクトタム(FACTOTUM)」のほか、さまざまな企業との協業も行ってきた有働幸司デザイナーが今後の物作りのあり方を語った。
FACTOTUM
有働幸司デザイナー
Q.今、デザイナーができることは?
A.新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまなブランドや企業が展示会やイベントを開催できず、小売店も臨時休業を余儀なくされている。その経済的影響はファッション業界にとって深刻で、今後はさらに厳しい状況になっていくことも予想される。未曾有の事態は、人々の価値観や嗜好を変えてしまうかもしれない。でもファッションデザインに携わる身として、ただおびえているわけにはいかない。たとえ経済が厳しくなったとしても、その環境でどのような服を提案すべきかを考え続けている。従来のファッションシステムの中に答えがあるとは必ずしも思わない。システムが変わる可能性があり、資本主義社会がいかに不安定であるかを目の当たりにした今だからこそ、ファッションデザイナーは発想を転換し、“新しいスタンダード”を提案するタイミングだと思う。着た人の気持ちが前向きになり、生活に幸せが生まれて、地球や社会に優しい服作りがこれからは必要になるはずだ。