ベルリンは新しい日常へと動き出している。4月下旬から小売店の営業再開などロックダウン緩和に踏み切った街には徐々に人が戻り始め、5月4日にはヘアサロンが、9日には美容サロンやマッサージ店が再オープン。そして、15日にはこれまで持ち帰りとデリバリーのみだった飲食店も、テーブル間隔を1.5m開けることなどを条件に店内営業を再開できるようになった。
市民や観光客でにぎわっていた繁華街の人出はまだ少なく、大規模イベントも禁止されているため、かつての光景にはほど遠い状況と言える。しかし、サマータイムになり21時前まで明るく気候も良くなったベルリンの公園には、家族や友人同士でピクニックや日光浴を楽しむ姿が戻ってきた。その和やかな風景を見ると、一瞬、新型コロナウイルスの存在を忘れそうになるほどだ。
そんな今のファッションを語る上でマスクは外せない。現在ドイツ連邦保健省は、強制ではないもののマスクの着用もしくは口と鼻を覆うことを強く推奨。州によってルールは異なるが、ベルリンでは公共交通機関を利用するときと小売店に入店する際にはマスク(または鼻と口を覆う布やスカーフ)の着用が義務となっている。そのため、多くの人がマスクを携帯し、必要な時に着けている。また、マスクを着用している店員も増え、感染拡大予防や相互配慮の意識が浸透しているようだ。
単にマスク着用のファッションといっても、そのスタイルはさまざま。薬局で購入したシンプルな医療用マスクから、既製品や自作の柄入り布マスク、バンダナ、そしてデザイナーズブランドが提案するデザイン性の高いものまで幅広い。ここでは、新たな日常を過ごすベルリンの人びとのスナップと街の様子を紹介する。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員