リモート生活が始まって約2カ月。髪の毛のセットをすることもなくなり、おうち時間の大半はパジャマで過ごしてしまっている……。とはいえ家の中にずっといては体に悪いだろうと、2駅分離れた公園ぐらいまでは歩いたりしている。ワードローブにはカラフルな服が多いため、悪目立ちしないよう日々チェンジして、結果として着こなしに気を遣っている格好だ(笑)。とはいえ、公園では風が吹けば砂埃が舞うので、足元はもっぱら2軍のスニーカー。しかし気温上昇に伴い、そろそろサンダルかな?と考えていた。
通退勤がなくなった分、ネットショッピングには十分な時間ができた。あれこれ眺めていて、あるブランドに出合った。それが奈良県発の「ベンチ(BENCH)」だ。実はサンダルの季節のたびに気になっていたブランドで、公式ECの中でビビビ!ときたのが、手刺しゅうアーティストのケンダイ(KENDAI)によるワッペンを付けたモデル。でも、そこには“SOLD OUT”の文字……。あきらめきれずに特設フォームから問い合わせてみる。すると、「ちょうど今月から受注生産を開始する」との回答。なんでも聞いてみるものだ。さっそく1足オーダーさせてもらった。
欲しいと思ったもの(=興味を持ったもの)は、きっちり調べたくなる。職業病かもしれない(笑)。奈良県はかつて履き物の街として栄え、今でも靴下や革靴産業にその名残がある。中でも“便所サンダル”“ベンサン”と呼ばれるPVC素材の一体成型サンダルの一大生産地だ。国内に3社ほどしかない主要メーカーは全て奈良にある。実家や田舎のおばあちゃんの家に必ずあって、その履き心地の良さや“ぜんぜん壊れないな”という丈夫さは誰もが体験済みだろう。仕上げ加工により抗菌効果も高く、それゆえの便所需要であり、ほかにも病院や学校などの公共施設で長い間親しまれている。
その便所サンダルをアップデートしているのが「ベンチ」だ。藤澤豊生ディレクターは、東京でファッションPRや大手スポーツアパレルのデザインチームに所属したのち、2018年に同ブランドをスタートさせた。「便所サンダルの魅力を世界に発信していきたい」と意気込み、ジャーナルスタンダードやビームス プラネッツなど大手セレクトショップを中心に100店舗以上に卸している。「消化率は、ほぼ100%」だという。ちなみに主力アイテムの単価は7000円前後で、2019年の生産数は2万足だ。
さて、届いたサンダルを履いてみる。そうそう、この感覚この感覚!懐かしく、そして安定のフィット感だ。艶感のあるブラックに虎の刺しゅうだから、モノトーンなセットアップスタイルの外しにだって良いと思っている。「ベンチ」を買い付け、また別注も行うジャーナルスタンダードの松尾忠尚ディレクターからは、「クッション性抜群のシャークソールの履き心地も格別!」と聞いているので、次はそちらにも挑戦してみたい。