アメリカを中心に欧米で拡大しているクリーンビューティは、健康や環境に害のある成分を使用せず、環境や社会、動物に配慮された美容アイテムを指す。しかし、“害のある成分”とはどのようなものだろうか。なぜオーガニックやビーガンではなく、クリーンビューティが必要なのか。クリーンビューティをうたう企業やブランドにはこういった疑問を解消し、知識を広めることが求められている。
クリーンビューティは成分に加え、製造から販売に関するサステナビリティやエシカルなど、これまでの美容業界の多様な問題を解決するために生まれた概念といえる。そのため、まずは消費者に問題について知ってもらい、選択肢を与えることが重要だ。スキンケアブランドの「バイオサンス(BIOSSANCE)」は消費者や業界人に向けて知識を発信する「ザ クリーン アカデミー(The CLEAN ACADEMY)」を昨年10月に開始した。
「ザ クリーン アカデミー」は自社サイトとユーチューブ上で配信する動画コンテンツで、「バイオサンス」がクリーンビューティカテゴリーのリーダーシップを確立するためのものだ。キャサリン・ゴア(Catherine Gore)社長は「クリーンビューティはそれぞれが独自に解釈しており、情報が錯綜していて混乱を招いている」と、現状の課題を語る。
シーズン1では、ネットフリックス(NETFLIX)で人気のリアリティー番組「クィア・アイ(QUEER EYE)」に出演するジョナサン・ヴァン・ネス(Jonathan Van Ness)がホストとなり、ゲストを迎えてクリーンビューティに関してたびたび寄せられる質問や、グーグルの検索データに基づく疑問に答えている。ゲストは専門店のフォレイン(FOLLAIN)やアメリカの環境保護活動団体のEWG(ENVIRONMENTAL WORKING GROUP)などの専門家で、より詳しく、正しい知識を学ぶことができる。
その内容は使用すべき成分と避けるべき成分、成分ラベルの見方など具体的なものが多い。「WWDビューティ」5月14日号でも触れたが、アメリカでは1938年以来、化粧品成分に関する規制が変わっていない。そのため広く使用される成分の中にも避けるべき成分があり、専門家たちが詳しく解説している。シーズン1は2万2000回再生され、1万件以上のコメントが付く反響となった。
シーズン2ではさらに成分について深く解説する。クレンジングやアイケア、日焼け止めなど、スキンケア製品で使用される一般的な成分について語っている。これは害のあるものを指摘するだけでなく、クリーンな成分がどのように肌の美しさを導くかという点についても触れている。「消費者が美容製品をより理解できるようになれば、効果(効能)のためにサステナビリティを犠牲にする必要はなくなる」とゴア社長は語る。
シーズン2で特徴的なのは、同業である「イリア(ILIA)」「ユース トゥ ザ ピープル(YOUTH TO THE PEOPLE)」「ヴェレダ(WELEDA)」「エイサー ビューティ(AETHER BEAUTY)」などのブランドがゲストで登場することだ。「ユース トゥ ザ ピープル」の共同創業者グレッグ・ゴンザレス(Greg Gonzalez)とジョー・クロイズ(Joe Cloyes)はこの協業に関し、「志を同じくするブランドと共に業界の変化をより早く生み出せるように挑戦しており、クリーンに関する教育に重点を置く。私たちは一緒に業界の変革に影響を与えていると確信している」と語った。
クリーンビューティを定義し、発信しているのはブランドだけではない。専門店のクリード(CREDO)は2月、オフラインイベント「クリード ビューティ サミット(CREDO BEAUTY SUMMIT)」を米サンフランシスコで開催した。消費者を対象にした美容を楽しむイベントで、30ブランド以上、100人以上の創業者やブランドスタッフが集まり、製品の効能だけでなくクリーンビューティに関する啓発や知識の教育を行った。
優しく、爽やかなニュアンスの言葉とは裏腹に、強いメッセージを持つクリーンビューティの拡大には、発信する企業や団体による啓発活動や認知拡大が必須になる。海外で広がるこういった取り組みはますます重要で増えていくのは間違いない。日本においてはまだスタートしたばかりにも見えるクリーンビューティ。今後、海外同様の啓発をどう行っていくかが、カギになりそうだ。