夏の訪れが年々早まるような感じがあり、早くもTシャツが街中での出番を迎えました。夏ルックの主役的存在で、見慣れた白Tシャツについても、このニューノーマル(新常態)の時代にふさわしい着方が登場。最大の見どころは、イメージの異なるアイテムとの“異物ミックス”。マンネリ感を避けつつ、白Tならではの清潔感やミニマルさを生かした新コーディネートはTシャツの常識を打ち破る快感まで呼び覚ましてくれそうです。
ロンドン・ファッション・ウイーク中に開催された「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」のショー会場に訪れたファッショニスタは、白Tシャツをノンシャランに着こなしました。決め手はTシャツの上に乗せたネックレス。普段着イメージを帯びやすい白Tシャツを一気に格上げしており、イヤリングとのハーモニーにもリュクス感が漂います。パンツ、スカート、ライトアウターと、それぞれのコーデ相手ごとに一工夫を加えるだけで、ありきたりな白Tコーデから脱出が可能。今回は国内ブランドの今春夏ルックから、そのポイントを探っていきましょう。
◆センタープレスのきれいめパンツで、凛としたTシャツ姿
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Tシャツにはイージーな印象があるので、きちんと感を備えたボトムスを選ぶのは、上手にバランスを取る近道。たとえば、正面にセンタープレス(クリース)があるパンツなら、文字通り折り目正しい見え具合に整います。
写真1枚目の「ポステレガント(POSTELEGANT)」は涼しそうな素材のワイドパンツで合わせて、夏向きのTシャツ姿に。きれいめに見えているのは、くっきりしたセンタープレスのおかげ。Tシャツは袖を軽くロールアップして、軽快な印象に。長め丈のパンツを生かして、性別にとらわれない“ジェンダーフリュイド(流動的)”な着映えにまとめています。
写真2枚目の「アーセンス(ARESENSE)」は落ち感のあるパンツスーツに、白Tを組み込みました。トレンドピースに復活したパンツスーツは、少し崩しめに着るのがこの春夏らしいスタイリング。だから、Tシャツは格好の相方に。裾を無造作にウエストインして、気取らない雰囲気に整えました。リゾート風のヌーディーサンダルをパンツスーツに合わせるのもニューノーマル流です。
◆“ムードあり”の女っぽスカートで合わせて、白Tを味付け
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飾り気の少ない、割とプレーンな見栄えの白Tシャツは、ムードを醸し出すスカートが好パートナーになります。ロマンティックやレディーライクなど、スカートの持ち味次第で使い分けるのが、着回しパターンを増やすコツです。
黒レースのロングスカートを白Tに引き合わせたのは、30代以上の大人女性に大人気の「エブール(EBURE)」。裾が透けて、ニュアンスを帯びたレーススカートも、白Tシャツによってフェミニン度がダウンして、逆に抜け感が漂います。フラットサンダルで足元も伸びやかに整えて。
白で統一すると、Tシャツルックもノーブルな印象に様変わり。写真2枚目の「ア ピューピル(A PUPIL)」は、白のプリーツスカートとのワントーンコーデです。節度を感じさせるプリーツに加え、透かしレースもあしらってあるので、Tシャツ姿が繊細なムードに。オーバーサイズのTシャツでも、ストリートっぽく見えず、むしろ愛らしいたたずまいにまとまっています。
◆ライトアウターを重ねて、ふんわりリラックス&のどかな落ち感
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Tシャツ1枚では気後れしそうな場面でも、薄手の羽織り物を重ねれば、味わい深いルックに仕上がります。汗ばむ季節になっても、初夏や梅雨時は温度変化が大きいので、ライトアウターは重宝するはず。
「アングリッド(UNGRID)」は白Tシャツの上から、スポーティーな薄手アウターをパサッと羽織って、普段着イメージを払拭しました。軽い羽織り物ならではのエアリー感を演出。着丈が長めの分、縦長イメージがアップ。ダークカラーの柄スカートとのコントラストを利かせつつ、スニーカーの色と絡めました。
温度が上がってきたら、アウターを“半分オフ”するのも、着方の選択肢に加えてみては。蒸し暑さを避けつつ、程よくくつろいだ風情を醸し出せます。写真2枚目の「グラフペーパー(GRAPHPAPER)」は白Tシャツの上にジャンパードレスをオン。ライトアウターを肩からずり落ちさせて、レイヤードに飾らないムードと自然な落ち感をまとわせました。
一時のブームを超えて人気の続く白Tシャツだけに、着こなしのレパートリーを増やして損はありません。マンネリ化させないためには、きれいめアイテムとのマッチングやライトアウターとのレイヤードなど、さまざまな“異物”との相性を試すのが一番。シンプルだからこそ、ひねりがいがある白Tシャツを使って、自分好みのニューノーマルを発見してみませんか。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い