ビジネス

アパレル・出版25社に聞く、在宅勤務の本音 コミュニケーション不足がデメリット1位

 「WWDジャパン」5月18日号では「リモートワーク」を特集した。多くのファッション企業がリモートワークを導入して1カ月半以上が経ち、さまざまな“現実”が見えてきたであろう今、実践する中で感じた彼ら・彼女らの本音と改善策を探るため、アパレル・出版25社、計39人にアンケートを実施した。本記事では、在宅勤務のメリットとデメリット、コミュニケーションの工夫における声をランキング形式で紹介する。

メリット
1位 通勤時間の節約による時間の有効活用 14人
2位 自分の業務に集中できる 12人
3位 大人数での会議が開きやすい 5人

 メリットの1位は、誰もが感じているであろう「通勤時間の節約」だった。これまで移動にかかっていた時間を他の業務やリフレッシュ、家族との時間に充てられることが最大のメリットと思う人は一般的にも多いのではないだろうか。2位は2票差で「自分の作業に集中できる」。周囲や電話などに中断されることなく自分のペースで仕事ができるので、作業効率が上がるとの声がほとんどだった。3位には、オンラインを活用することで、会議室など場所を問わずカジュアルにいつでも集まれるといった、リモートならではの特徴を生かした“ミーティングの効率化”が挙げられた。またそれに付随して、「無駄な会議や打ち合わせが減った」「若手が会議後にホワイトボードを消して椅子を整えて消灯するといった煩わしさがない」「上座がないので、これまでよくいた“居るだけで何もしゃべらないけれど偉い人”は淘汰される」「上司の子どもが登場したり、おしゃれなインテリアが見られて、親しみを感じた」という声もあった。

 トップ3以外では「ランチが自炊できるので健康的」「紙などのコスト削減」「今後の働き方の多様化に対応する組織力ができた」「一人一人に災害や緊急時にも業務を継続させる応用力がついた」といった意見もあった。

デメリット
1位 コミュニケーション不足 17人
2位 商品や素材に触れることができない 6人
3位 申請書、経費関係など、印鑑が必要な場合に出社せざるを得ない 4人

 デメリットの1位は「伝わっていると思っていたことが伝えきれていなかったり、意思疎通が難しい」「すぐ相談したいときに連絡しづらい」「人の仕事から情報を受け取ることがなく、全体感を取り出しにくい」など、ダントツで「コミュニケーション不足」だった。出版社においては特に、「雑談から生まれる生きた企画やヒントが生まれにくい」という声が多かった。メリットの2位、3位とはある意味、真逆の答えで、人との関わりはある時はメリットにもなり、またある時にはデメリットにもなることが理解できる。人とどう関わりを築くかを考えさせられたのもリモートワークの特徴だ。2位は仕事内容にもよるが、商品やサンプル、素材に直接触れることができず、リモートでの判断には限界を感じるという意見だった。3位には社判捺印や承認、経理など、会社でないとできない業務が挙げられた。社会問題にもなっている捺印問題は多くの企業が価値観を変えざるを得なくなっているのではないだろうか。

 その他少数意見には、「みんなリモート会議がいそがしいから電話をかけても出ない。“ふとした瞬間”がいつなのか見えないので、小さなことでもしっかりアポを取らなければならず、逆にだるいときもある」「集中しないときは職場より作業効率が悪くなる」「仕事への関与率に個人差が大きい」「新入社員の教育が難しい」「業務のプロセスが見えない中、プロセス評価の若手をどう評価するか」「社外との商談は対面の方がよい」「自宅でのネットワーク&セキュリティ問題」などが挙げられた。

 デメリットを踏まえ、社内でのコミュニケーションの工夫についてはさまざまな回答があり、各社在宅勤務を円滑に行うための改善策を模索している様子が見られた。その中でも一番多かったのが「事前資料の作成」だ。事前に資料を共有して各自が内容を熟知してから会議に臨むことで、会議の趣旨をより明確にすることができ、短時間で終わらせることができるという声が挙げられた。実は弊社でも以前から言われていたことだが、リモートワークを機に一気に進んだことだった。次に多かったのが「朝礼・夕礼に業務報告することで、やっていることを可視化」。コミュニケーション不足や各自の進捗状況が見えないことも踏まえて、「一斉メールではなく、個人的にメールをして個々の状況の確認をこまめに行なっている」「“遊び”部分がいつもより減っているツケが数年後に返ってきそうだと感じるので、なるべく仕事と関係のないこともいつも以上に話すようにしている」という回答もあった。

 またオンライン会議においては、「画面での映り方のバランスが悪いとコミュニケーションする相手も気が散ると思うので、背景も含めて工夫」「同時にチャットも活用したり、音声以外でも内容が伝わるようにしている」「対面よりもテンションが低く伝わりがちなので、声のトーンをいつもより少し高めにして話す」という意見があった。

■アンケート回答者(五十音順、匿名希望者は記載なし)
石井 洋/「レオン」編集長
石切山 哲也/ビームス人材開発部係長
石平賢太朗/ワールド グループコミュニケーション推進室
五十川楓/ワールド グループコミュニケーション推進室
江端克之/レナウン執行役員事業部長
大竹智恵美/オンワードホールディングス人財ディビジョン・ダイバーシティ推進セクション課長代理
小笠原希帆/「フリーダ」ディレクター
國吉祐子/「アッシュ・ペー・フランス ビジュー」ディレクター 
小嶋奈南美/「ジルスチュアート」PR
塩谷薫/「オッジ」編集長
地下由佳子/「ウィズ」ファッション・読み物・web班
菅悦子/ベイクルーズグループ広報
関一暁/「アーノルドパーマータイムレス」戦略事業部事業部長
高田浩樹/「キャンキャン」編集長
竹田憲章/ダイアナ サプライチェーン推進部部長
田中智史/イトキン執行役員WEBビジネス部事業部長
永野優太/「ウィズ」編集者
福田太郎/ダイアナ 商品部バイヤー
朴里奈/ビームス社長室宣伝統括部
堀田覚/パル執行役員プロモーション推進部 部長
丸山花乃/「ヴィヴィ」編集者
三代彰郎/ジュン執行役員
森田聖美/「フィガロジャポン」「madameFIGARO.jp」編集長代理

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