ファッションという「今」にのみフォーカスする産業を歴史の文脈で捉え直す新連載。1回目はコロナ禍の非常事態の中でファッションの行方を考える。(編集協力:片山マテウス、この記事はWWDジャパン2020年5月18日号からの抜粋です)
「ファッションと付かず離れず30年」というのが、編集者である私のファッションとの関わりだ。今回長年愛読する「WWDジャパン」で連載を持つにあたり、時に当事者であり、時に傍観者でもあるイン&アウトする視点でファッションを語るものにしたい。さらに「今」という横軸にのみフォーカスしがちなこの産業に、縦軸の歴史的な視点を持って語りたい。なぜなら、時代の変化が激しいがゆえに、紆余曲折しない長期的な視点を持つには、歴史の文脈を理解することが求められるからだ。
この連載タイトルは松尾芭蕉の俳句の理念から。芭蕉にとって俳句の真髄とは「不易=永遠に変わらない普遍の美」と「流行=変わり続けること」のどちらも追求することにある。ファッションにも同じことが言えるのではと。さらに、生物学者の福岡伸一のベストセラー「生物と無生物のあいだ」の有名なテーゼに「動的平衡」がある。生物は生命状態を維持するためにダイナミックに変わり続けなければいけないという考えだが、それも「不易流行」に通じるはずだ。生物学において、生きることは変化すること。ファッションの語源はラテン語の「Factio=創造」にあるので、ファッションが創造的であるためには、他に先んじて変わらなければいけない。
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