総合繊維メーカー、セーレンの2020年3月期連結決算は、売上高が前期比2%減の1200億円、営業利益が同0.8%%減の100億円となり、新型コロナウイルの影響で増収増益は7期連続で途切れた。北米、中米、南米、中国、アジアにある海外子会社の売上高は、同1.8%減(現地通貨ベース)の630億円だった。
セグメント別では、ハイファッション事業の売上高が同2.8%減の246億円、営業利益が同4.6%増の11億円だった。川田達男・代表取締役会長兼最高経営責任者は、新型コロナ禍におけるハイファッション事業の厳しい見通しを示しながらも、自身の肝いりで推し進めている独自のデジタルパーソナルオーダーシステム「ビスコテックス(VISCOTECS)」を今後も強化していく考えだ。
「『ビスコテックス』は、百貨店など40店舗を構えて着実に拡大している。BtoCビジネスが先行したが、ITを活用した全く新しいビジネスモデルに対して業界内の理解が深まり、ようやくアパレルメーカーの採用が増加してBtoBビジネスへの活路が見えてきた。まだ時間がかかるが、さらに認知度を高める必要がある。このシステムの方向性は間違っていないと思う」と話した。
「ビスコテックス」は、IT技術と繊維一貫生産機能を融合して独自に開発したデジタルプロダクションシステム。客が等身大のモニターとタブレットを用いてバーチャル試着しながら、洋服のシルエットや色、柄、サイズを自由に組み合わせて、自分だけの一着を作れるというもので、その組み合わせ数は47万通りあるという。自社で開発したインクジェットプリンターを核に、全工程をIT制御し、企画から製造までの短納期化と、多品種、小ロット、在庫レス生産を実現した。
21年3月期の業績予想は新型コロナの影響により未定としている。10年後の目標として、連結の営業利益を今の105億円から約2倍の200億円、ハイファッション事業も今の11億円から約2倍の20億円を掲げた。