新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は2003年にブランドをスタートさせ、14年からはパリ・ファッション・ウイークでコレクションを発表し続ける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーが登場。
ANREALAGE
森永邦彦
Q 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?
何が大切なのかを考えながら仕事をする日々が続いている。ブランドをはじめてから今まで異常なスピードで走り続け、立ち止まることが許されない世界にいた。しかし、今はじめて少し止まって、日常について、ファッションについて、ブランドについて、何を大切にしてこの先進むべきなのか、その答えを自分の中に種を植える作業をしている。
これまで、「アンリアレイジ」のファッションは“日常を変える装置”だと信じて活動を続けてきたが、今は日常が非日常となり世界が変わってしまった。今ファッションを“日常を取り戻す装置”として、日常を取り戻さなくてはいけないとき。ファッションを通して、新しい日常をつくること。今の環境下でやれること、今私たちが作るべき服に対して真摯に取り組みたい。
店舗が営業できない状況で、自分たちにできることはないかと考えはじめたのがZoomを使ったリモートショップ。ECで服を販売する中で必然的に欠落していたコミュニケーションを重視し、デジタルでの購入にフィジカルな体験を付加する試み。販売を行う場ではあるが、会えなくなってしまった顧客とコミュニケーションをとり続ける目的が大きい。一人40分間の完全予約制で、いつもより深い特別な接客ができて売り上げも好調だ。