新型コロナウイルスの感染拡大防止のため政府から緊急事態宣言が出され、多くの美容室が休業や営業時間の短縮を強いられた。接客業である美容師にとっては、顧客や新客と接する機会の多くが失われ、アプローチがインスタグラムを中心としたSNSのみとなってしまったケースも少なくない。
しかし、その自粛期間を逆手にとり、SNSへの投稿内容を工夫することで急速にフォロワーを伸ばし、サロンユーザーの信頼を得た美容師がいる。ここでは、美容室・美容師ランキングサイト「ヘアインフォ」のインスタグラムのフォロワー調査で、自粛期間中のフォロワー数の増加が著しかった美容師“四天王”を紹介する。(この記事はWWDビューティ2020年5月28日号から抜粋・加筆をしたものです)
まずは「アルバム(ALBUM)」の柴田夏実ディレクター兼渋谷店店長。現在の13.9万フォロワーと4人の中で最も多いが、それでも1日に1300フォロワー以上伸ばした日もあった。「私に興味を持ってくれた方も、すぐにはサロンに来店できない状態が続いていたので、できる限り私が話したり動いたりしている動画で、人となりが伝わるような投稿を心掛けた。中でも最も反響が大きかったのが、“2分で小顔”を作るマッサージ動画で、2万4000人くらいが保存してくれた。私はユーチューブを参考にしてインスタに投稿するネタを考えることが多いが、こうした“~分で~できる”といった動画はユーチューブではうけているのに、意外とインスタに投稿している人は少なかった。その点が、インスタをよく見ているサロンユーザーに響いたのだと思う」と柴田夏実ディレクターは話す。
同じく「アルバム」の中村有李アシスタントは、2020年の新卒ながら、インスタグラムのフォロワーを4月下旬から毎日1000フォロワー以上増やしていて、4月1日時点では2956フォロワーだったが5月8日には2万771フォロワーにまで増加。SNSに強い同サロンにおいても異例の躍進を続けている注目の新人だ。
彼女の投稿の特徴は、得意とするメイクのハウツーが多いこと。韓国、中国などF1層(20~34歳の女性)でも若い年代向けのメイクトレンドを押さえつつ、透明感のあるオリジナルメイクを発信して人気となっている。「心掛けているのは、使用したアイテムの情報を細かく書き込むこと。そうすると、私にあまり興味のない人でも、その中の一つでも良いと思えば“いいね!”を押してくれるし、フォロワーになってくれることもある」と中村アシスタント。
また、最近で最も反響が大きかった投稿は、“前髪の巻き方4選”を紹介したもの。過去の投稿を見やすくまとめたものだが、自粛期間中で普段よりSNSを“じっくり見る”サロンユーザーが多い中、比較検討しやすいまとめ記事は注目度が高かったようだ。柴田ディレクターによる、人気のインナーカラーを“早見表”にした投稿も反響を呼んだことから、人気記事の一つの傾向であったと考えられる。
SHIHO「ジェスィーウール ミエル(JE SUIS HEUREUSE MIEL)」スタイリストのインスタグラムは5万フォロワー。自粛期間中には1500フォロワー以上伸ばした日もあった。「自粛期間は外に出る機会が少なくなることから、ヘアカラーなどの投稿の需要が少なくなると感じ、“女の子がより楽しめる豆知識”をテーマに発信することを決めた。美容に限らず、今みんなが知りたいことは何かを徹底的に研究し、少しでも自粛期間が楽しいものにと思いを込めて内容を考えた。投稿画面の色使いやコラージュにもこだわって、ハッピー感あふれる投稿を心掛けた」とSHIHOスタイリスト。
“豆知識”には“髪の正しい乾かし方”といったヘア関連の投稿から、“お家でできる(歯の)ホワイトニング”“盛れるインスタフィルター9選”といったヘア以外のものまであるが、それぞれ多くの“いいね!”を集めた。「マスクでもメイクがぱっとする技や前髪アレンジ特集など、マスク生活に向けた発信もとても反響があった」という。
「ガーデン(GARDEN)表参道」の田塚裕志・店長のインスタグラムは5.3万フォロワー、自粛期間中は600~1000フォロワー以上伸ばした日も多数あった。投稿内容は非常に特徴的で、ミディアムレングスに特化したモデル画像・動画で統一感を出している。
「投稿の大半がミディアムで、アレンジするにしてもわずかな変化のみ。モデルに関しても、反響の大きかったモデルさんにまた登場してもらうということを繰り返していたら、何人かに絞られてきた。仕上がりは画像ではなく動画にすることで、“動くヘアカタログ”として活用してもらえるようにしている。このスタイルを続けているうちに、インスタを見てミディアムにするお客さまが増え、今では8~9割がミディアムや元ミディアムのお客さまとなっている」と田塚店長は語る。
最近で最も反響の大きかった投稿は、“ショートからミディアムヘアまでかわいく伸ばす企画”の第1回目の投稿だ。今後2カ月おきくらいのペースで、過程を追って投稿していくという。先述した中村アシスタントの人気投稿“前髪の巻き方4選”も、実は“どうにかしたい伸びかけ前髪”のための企画。自粛期間中に髪が伸びてしまった人も多いため、“伸びる”“伸ばす”といったキーワードへの反応が強かったようだ。