※この記事は2019年12月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
アナタと心中するわけにはいかないの
その昔、今は「WWDジャパン」や「WWDビューティ」のオマケになった「ファッションニュース」の編集長だった頃、(当初は大迷走したのですがw)その後よく言えば“とっつきやすく”、悪く言えば“ふざけ気味に”、そのムードをシフトチェンジしたことがあります。実は今も同様で、このお手紙、「WWDJAPAN.com」のコラム、「WWDジャパン」の3ページに掲載する社説のような位置付けの提言に至るまで、僕はちょっとだけブロークンな言葉遣いを好んでいます。「コレ」「ワケ」「カンジ」「とか」「(笑)」などを多用する文章があったら、それは大抵、僕の記事でしょう(笑。あ、またやっちゃった)。︎
正直、賛否両論なのは知っています。批判的なご意見の多くは、「WWDには、真面目な論評を期待している」というもの。正直に言えば、ブロークンな文体でも当の本人は結構真面目に書いているし、論評を忍ばせているつもりなのですが、そんなご批判は理解できるものであり、真摯に受け止めています。本当に。
でも現段階においては、改めようとは、正直思っておりません。「なぜ?」と聞かれたら、「アナタと心中するワケにはいかないのです」と答えます。
ファッション業界を見つめて十数年。正直、かつての勢いはありません。乱暴に言えば、消費者の多くがファッションへの興味を失いかけています。そう考える僕はある時から、難しそうな文章、スマホで読みづらい文章、この世界を恐々覗いている人が「やっぱムリかも」って思っちゃいそうな文章を書き続けることができなくなった。興味を失いかけている人たち、ちょっと関心はあるけれど「なんだか怖そう」というイメージを抱き飛び込めないでいる若者に、とっても楽しいことを知ってほしい。そう考えた時、彼らにも親しんでもらえるかもしれない、ブロークンな文体を選んだのです。既存のファンは、少なからず裏切りました。でも僕は、新しい人を巻き込みたかった。方法論として正しいのかどうか分からないけれど、その一手が、こんな文体だったのです。
今年も、起死回生を志し変革、刷新したブランドがたくさんありました。そして当初、そのいくつかは、批判的な意見にさらされました。「サマンサタバサ」や「JJ」は代表例でしょう。既存のファンが「裏切られた」と思う気持ちは、理解します。でも、当時の「ファッションニュース」が変わらなきゃ生き残れなかった(結局、生き残れなかったのですが)の同様、刷新は続けるための勇気なのです。
ファンと心中しないためにも、一旦は嫌われちゃうかもしれないけれど又ファンになってもらえるよう努力し続けられる環境を作るためにも、あがき、もがく人たちによる改革は、どうかちょっとだけ寛大な心で応援してほしい。だって心中しないための大刷新で、彼らはものすごい勇気と労力を費やし、頑張っているのですから。
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