※この記事は2019年12月25日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
真面目に問題を解決、なんてやめちゃえ‼︎
AI(人工知能)と関わるテック系の方々は、「依存しすぎるあまり、画一的にならないように」と相当気をつけています。蓄積したデータに基づく判断は、究極、同じ方向性に収斂します。となると、差別化できなくなる。だからAIとの付き合い方に注意しているし、そもそもの判断基準、“先生データ”を決めるに際しては、長期的なビジョンを構築しています。「このビジネスにおいては、AIに、この分野を担ってほしい。だから、まずはこのデータを覚えさせ、今後の判断材料にしてもらおうね」。こんな考え方です。︎
この考え、今年もヒットを連発した山口周と同じですね。彼もまた、データに裏付けられた論理的思考は画一的になりがちと説き、それを超越するアート的思考の必要性を説いています。詳しくは2017年の大ヒット作、「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」をご一読ください。そして彼は近著、「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式(以下、ニュータイプの時代)」の中で、もはや問題を解決する人の価値は低くなる一方で、これからは問題を発見できる人に進化しなければならないことを説きます。上述のAIの話と絡めますと、これからは「今、何につまづいているのか?」を考え、抱えている問題を発見できる人に価値があって、多分その解決は遠くない将来、AIが結構大きな部分を担ってくれるのでしょう。
この1年、個人的にはず~っと「“真面目”の弊害」を考えてきました。日本人は、業界人は、そして会社の同僚は皆、と~っても真面目です。正直、私とは違います(苦笑)。だから、彼らは問題を解決しようとしている。でも上の話を踏まえると、データを基に、“真面目”に考えて導いた問題の解決策は大抵、どれも似通っている。だからあんまりワクワクしないんです。そろそろ思い切って、ちょっと不真面目なくらいに、データなんか忘れて、解決なんてしようとせずに現状を見つめるときなのでしょう。ただ山口周も「ニュータイプの時代」で訴えている通り、「問題を発見」するには、目指すべき理想や大義が必要です。「問題」とは、理想と現実のギャップですからね。「理想」がないと、「問題は発見」できない。今の業界は、社会的だったり一般的だったりの問題を、自分たちの問題と錯覚して、解決しようとしています。そりゃ似通うし、個々が“自分ごと化”できるハズありません。
元来ファッションやビューティ業界は、アート的思考が得意なハズです。ということは、チャンスの時が到来しています。年末年始は、絶好の機会。僕がオススメする山口周の2冊を読んで、オリパラも待っている2020年を夢想しながら、自分は業界の中で、どう生きたいかを考えてみてはいかがでしょうか?きっと、来年の仕事がちょっと変わってくるハズです。ちなみに友人に聞いた話ですが、山口周さん、大阪での公演当日に間違えて広島駅に降り立ってしまうくらいの方らしいですよ(笑)。スーパーマンじゃない。だから僕たちも、彼のように生きられるハズなんです。
今年のエディターズレター「From Our Industry」は、コレでおしまい。来年は1月6日から、デジタルなどの異業種に興味津々ながら、それでもファッションとビューティが大好きな僕が、「ねぇねぇ聞いて~」とか「昨日、ムカついてさ~」とか「コレってどう思う?」というテンションで、業界人の一員として、皆さんとおしゃべり感覚でコミュニケーションを積み重ねながら、毎日ワクワクしたいと思います。今更告白しますと、このタイトルには、そんな僕の思いが詰まっていまるのです。来年も引き続き、ご愛顧いただければ幸いです。
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