キュロットやショートパンツの復活が目立ってきました。ボトムスではワイドパンツやロングスカートが長く“主役”の座に就いていましたが、2020年春夏はラグジュアリーブランドが相次いで、大人のスタイリングとしてキュロットやショートパンツを提案しています。たとえば、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は透かし編みのニットトップスと合わせて、涼しげでエフォートレスなショートパンツ姿を披露。今回はパリとミラノのランウエイで発表された春夏コレクションのルックから、夏のコーディネートに役立つショートパンツの着こなしをキャッチしていきましょう。
◆ショートパンツでスーツ!足元は戦闘モードで
ショートパンツのスーツは、“ショートパンツ=カジュアル”の思い込みを覆します。「ディオール(DIOR)」はチェック柄のサマースーツを提案。柄が上下でそろっているので、きちんと感が際立ちます。スクールガール風の若々しいムードもまとえます。脚のカバーに役立つのは、ミリタリー由来のコンバットブーツ。ゴツめの顔がタフ感を呼び込みます。秋冬シーズンのヒットが有望なので、夏のうちに“先食い”するのが得策です。
◆デニムショーツをシャツワンピでオブラート
あえてバランスを崩すアシンメトリーはこの夏も勢いが止まりません。「ジバンシィ(GIVENCHY)」はデニムのショートパンツに、左右で異なる洗いをかけました。風合いや裾始末も不ぞろいでディテールにこだわりを感じさせます。そこに合わせたのは、ゆるっとしたオーバーサイズのストライプ柄シャツワンピース。正面だけウエストインして、後ろは長く垂らし、裾を遊ばせました。ヒップやももをさりげなくカバーできる自然体技です。
◆すっきりハーフパンツでニュートラルな大人デイリーに
マニッシュなハーフパンツを提案したのは「トッズ(TOD'S)」。一見、タイトスカートのようにも見えて、ジェンダーフリュイド(流動的)な着映えです。膝小僧がちょうど隠れる丈感のキュロットは大人女性も取り入れやすいタイプ。レザーのブルゾンにバッグのストラップを響き合わせて、装いに深みを持たせました。足元は素足にローファーで、こなれ感をアップ。全体に中性的でニュートラル、シーズンレスなムードが今の空気感を印象づけます。
◆制服風ワントーンで強さとフェミニンが同居
不穏な空気が濃い、今の時代感にぴったりの服に“制服”があります。上品なアレンジを加えた“インスパイア(派生)系制服”は、ぶれない強さと、凛とした雰囲気を醸し出せます。全体の色をそろえるワントーンとも、相性が抜群。「マックスマーラ(MAX MARA)」はトレンドのベージュで全身ワントーンに整えて、穏やかでいてタフなダブルミーニングの装いに。パンプスと同系色のハイソックスがロングブーツのようにも見えて、シャープなレッグラインを際立たせています。
◆“ボリューム×タイト=めりはり”の強弱方程式
量感に変化をつければ、短め丈パンツルックにメリハリが加わります。「MSGM」はサイクリングパンツを思わせるストレッチ系ハーフパンツを披露。脚にぴったり沿う分、トップスは思いっきりボリュームアップ。ブラウスの襟や袖がドラマティックで華やかなムードです。アスレチック系のパンツは脚線を引き締まって見せる効果が大。トップスに女っぽさやゴージャス感を盛るのが、程よいずれ具合を生むポイントです。
キュロットやショートパンツは足さばきがよく、夏に向けては頼れるボトムスです。トップスや靴で異なるテイストを添えると、男の子っぽく見えにくくなります。短め丈パンツが盛り上がる流れは秋冬以降も続く気配。タイツやロングブーツなどとの組み合わが打ち出されています。今のご時世に求められる、足早な外出にも重宝するので、短め丈パンツの着こなし技に磨きを掛けて損はないでしょう。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い