「WWDジャパン」6月1日号は「時計特集」。100年以上の歴史を持つ世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」が事実上崩壊し、一方でジュネーブに新たな秩序が生まれようとしている。“激動”という言葉がぴたりと当てはまり、各社がそのうねりに対応すべくデジタル化、D2C化などさまざまにアクションを起こしている。0.25歩先を行く時計業界にファッションが学べることとは?「WWD JAPAN.com」は紙面と連係して、経営トップの肉声を伝える。スイスの時計ブランド「ブライトリング(BREITLING)」は、2019年に「バーゼル・ワールド」との決別を表明。今年は8月26~29日の予定で、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の「ブルガリ(BVLGARI)」や、ケリング(KERING)傘下の「ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)」「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」、さらに独立系ブランドと共に展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ(GENEVA WATCH DAYS)」を開く。ジョージ・カーン(Georges Kern)最高経営責任者(CEO)が見る時計業界の未来とは?
WWD:「バーゼル・ワールド」が事実上崩壊し、年に1度、各社がそろって新作を発表することに懐疑的な意見も出ている。「ブライトリング」の新作の見せ方に変化はある?
ジョージ・カーン=ブライトリングCEO(以下、カーン):新作発表については18年から、開催時期や場所を柔軟に決定してきた。それがバイヤー向けのローカルロードショーであり、メディア向けのブライトリング・サミットだ。これによりブランド、バイヤー、メディア、そして顧客の距離が縮まり、発表から発売までの間隔も短縮できた。顧客は、新作発表後すぐの購入を期待している。「ブライトリング」は“年に1度”にこだわらず、定期的に新作を発表するつもりだ。ブライトリング・サミットは新作のテーマと市場動向を考慮しながら開催時期と場所を決定しているが、現在は今秋と来春の開催に向けてさまざまなプランを検討している。
WWD:“コロナショック”により、高級時計の主たる購入者である富裕層にも変化があるはずだ。資産価値の高い時計にいっそう注目が集まるのでは?という予測もある。
カーン:コロナショック以前からラグジュアリー市場は大きな変化したが、今後はより“インフォーマル”で多様でサステナブル、目的意識が高くて意義深いことに重点を置くようになるだろう。「ブライトリング」は、かねてから海洋保護団体のオーシャン・コンサーバンシー(OCEAN CONSERVANCY)や国際慈善団体のクベカ(QHUBEKA)とパートナーシップを結び、海を守り、そしてアフリカの人々に自転車を届けてきた。また、世の中は少しスローダウンするはずだ。これは時計業界にとってポジティブなことだ。人々が、機械式時計などクラフツマンシップあふれるアイテムに真の価値を見いだすからだ。これらの社会変化に対応できないブランドは失速するだろう。
WWD:混迷の時代に「ブライトリング」が行う打開策とは?
カーン:バイヤー、メディア、顧客とのコミュニケーションを維持するため、また新作を紹介するために、4月16日に初めてウェブキャスト・サミットを実施した。私自身がプレゼンテーションを行い、現在もブランド公式サイト上で公開している。
WWD:女性向けのプロモーションを強化している印象だ。「ブライトリング」のアンバサダーユニット“スクワッド”を日本向けに女性で結成するとしたら、どんな人選になる?
カーン:スクワッドはシネマ、探検家、航空、スポーツなどさまざまなジャンルの人で構成されているが、必ずしもメンバーは有名である必要はない。しかし、彼らは間違いなく情熱を共有するプロフェッショナルたちだ。だからこそフォロワーは共感する。日本人女性によるスクワッドを結成するのであれば、同様のアプローチになるだろう。
WWD:新作として、女性向けの“ナビタイマー オートマッチック 35”を発表した。レディスウオッチの戦略について教えてほしい。
カーン:多くの女性を魅了することは重要なミッションの一つだ。雑誌、ウェブサイト、SNS、そしてスクワッドを通じてアピールしてきた。例えばシネマ・スクワッドでは、ブラッド・ピット(Brad Pitt)、アダム・ドライバー(Adam Driver)とシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)が共演する。“ナビタイマー オートマッチック 35”の発売に際しては、中国人女優のヤオ・チェン(Yao Chen)を迎えた。彼女は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使も務める。彼女と共にアジアマーケットを刺激したい。