ビューティ

オーガニックとクリーンビューティって何が違うの?

 「WWDビューティ」では5月28日号で「オーガニック・ナチュラルコスメ」を特集しました。今号の前に、5月14日号で「<クリーンビューティ」を特集したのですが、よく聞かれるのが「クリーンビューティとオーガニックは何が違うの?」ということです。「クリーンビューティ」は近年登場した概念で、明確な定義や認証制度はないものの、弊紙ではブランドへの取材を通して、①健康や環境に害のある成分を使用しない、②製造から販売まで環境への配慮がなされている(サステナビリティ)、③動物実験の不実施や労働環境など社会に配慮している、と定義しました。つまり、オーガニック原料使用の有無にかかわらず、環境配慮など前述の項目を満たすブランドや商品、概念をクリーンビューティとしています。このクリーンビューティの概念は、サステナビリティや地球環境に対する意識の高まりから米国を中心に拡大し、世界中にトレンドが広まりつつあるもので、新しいカテゴリーであることから若年層の支持が高くD2Cブランドが目立つという特徴があります。

オーガニックは持続可能な農業生産方法の一つ

 一方オーガニックは、狭義には農薬や化学肥料を使わず有機肥料によって生産された農産物と、それらを原料に使った化粧品や食品などを指しています。有機農業は、環境保護やアニマルウエルフェア(動物福祉)に貢献するとともに、持続可能な農業生産方法の一つとされています。欧米やオーストラリア、ニュージーランドにはオーガニック化粧品の認証団体や機関が多く存在し、認証機関によってオーガニック成分の含有率や使用制限のある成分など厳しい審査基準が設けられています。フランスの国際認証機関「エコサート(ECOCERT)」が最も有名で、ほかにオーストラリアの「ACO」やアメリカの「USDA」などがあります。

 オーガニック認証においては、世界的な統一基準の策定を目指して欧州の5つのオーガニック認証団体「BDIH」(ドイツ)、「コスメビオ(COSMEBIO)」(フランス)、「エコサート」(フランス)、「イチェア(ICEA)」(イタリア)、「ソイル・アソシエーション(SOIL ASSOCIATION)」(イギリス)が国際NPO協会を設立し、2010年に統一基準「コスモス(COSMOS)」を策定しました。17年1月からはこれら5団体の基準は終了し「コスモス」に移行しています。「コスモス」の基準では、植物原料の95%以上を有機農法によって作られた原料と定めており、そのほかの主要な目標の中には、有機農業による生産物の使用を促進し、生物学的多様性に配慮すること、責任を持って天然資源を使用し環境に配慮すること、人間の健康・環境を尊重し、汚染物質を出さない方法で加工・製造すること、グリーンケミストリーの概念を組み込み発展させることなどが盛り込まれています。こうした基準が存在するため、欧米では認証基準をクリアしている商品以外がパッケージに“オーガニック”と表示することはできません。

エシカルやサステナも混同して使われがちなワード

 日本では、食品は農林水産省が認定する有機JAS認定マークがありますが、オーガニック化粧品を認定する公的な機関はありません。そのため、ほんの数パーセントしかオーガニック成分を含まず、海外ではオーガニックと認められないような商品でも“オーガニックコスメ”として安価に市場に出回っています。ここ数年ナチュラルブームやボタニカルブームがあり、なんとなく肌と地球にやさしそうというイメージが独り歩きしてオーガニックの本来の定義があいまいになり、消費者の混乱を招いています。

 オーガニックは本来、有機栽培原料を用いた化粧品を指しますが、オーガニックブランドの多くは地球環境と人、健康への配慮が根底にあるため、原料の栽培方法にとどまらず、フェアトレードやクルエルティフリー、女性のエンパワーメント、児童労働問題、雇用創出や地域活性化などに取り組むブランドが多く、エシカルであること、サステナブルであることとも密接に結びついています。こうしたことから、オーガニックがエシカルやサステナブルと同義のように使われることも多々あり、そこから来る混乱もあるようです。消費者への訴求効果を狙い、環境に配慮しているように見せかけることを「グリーンウォッシュ」といい社会問題化していますが、化粧品にもそうした製品は数多く存在します。

 日本国内のオーガニック市場は、2000年代に入って輸入が盛んになり、多くの海外ブランドが上陸しました。当初、オーガニック化粧品のほとんどを海外ブランドが占めていたのは、日本ではオーガニック栽培が可能な農地がそもそも少ないこと、そのため国産のオーガニック原料の調達が難しいこと、また化学合成成分の保存料の使用量を最低限に抑えて化粧品の中身を安定させる高度な技術とノウハウを持った製造工場が限られていたことなどが要因です。

クリーンビューティの機運はオーガニックブランドの追い風になるか

 現在では国産オーガニックブランドもかなり増え、自然派・オーガニック化粧品の国内市場規模は前年度比4.9%増の1415億円(2018年度、矢野経済研究所)と、毎年4~5%程度の成長を続けています。オーガニック化粧品は大量生産が難しく、コストがかかることから一般化粧品と比べて価格が高く、中小規模での展開が大半で、ビジネスの急激な拡大は構想として持っていないところがほとんどです。昨今のサステナビリティに対する意識の高まりやクリーンビューティのトレンドを見ると、企業の倫理観や姿勢に目を向けて購入する消費者がこの先増えていけば、オーガニック・ナチュラルブランドにとっては追い風になるのではないでしょうか。

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