ユニクロは6月5日、東京・原宿駅前に開業する商業施設、ウィズ原宿内に「ユニクロ原宿店」をオープンする。それに先駆けて3日に、記者会見と内覧会を実施した。会見には2019年6月の就任以来、公式の場として初めて赤井田真希ユニクロ日本・最高経営責任者(CEO)が登場。ソーシャル・ディスタンシングを守るため、出席者数をかなり限定し、換気の良い吹き抜け部分で会見を実施した。
本来なら書き入れ時のゴールデンウィーク前、4月25日に開業予定だったが、コロナショックでオープンが40日ほど後ろ倒しになった。インバウンド(訪日外国人客)も激減しているが、「インバウンドだけでなく、日本の方々に向けた店でもある。いつもの家の近くのユニクロ(とは一味違い、原宿では)商品、カルチャー、モノづくりへのこだわりや、より新しいユニクロを見せていくのが使命」と赤井田CEO。「われわれは、LifeWearのコンセプトの下、人々の暮らしをより豊かにする服として、究極の普段着を服作りのモットーにしている。新型コロナの状況下でも多様なライフスタイルが生まれた。一つ一つのお客さまの変化する要望に応えながら、進化するモノづくりをモットーとしていきたいと思っている」と話した。
原宿店は、4月にオープンした「ユニクロパーク横浜ベイサイド店」や6月19日にオープン予定の銀座の「ユニクロ トウキョウ」と共に、LifeWearというコンセプトを体現する“戦略店舗”として登場。「(原宿だけでなく)さまざまな土地でそれぞれの特徴を持った旗艦店、大型店の出店を加速している。特に原宿は、若者が集う情報発信基地というだけでなく、1998年にフリースブームを生んだ都心第一号店を出店した街でもある。日本全国、どこの土地でもそれぞれの土地を生かした地域との共存共栄ができるようなお店が作っていければ」。
原宿店は1階(約264平方メートル)、地下1階(約1650平方メートル)の2層の作り。店として大きな特徴は2つだ。1つ目は、ユニクロとジーユーが共同で開発した着こなしアプリ「スタイルヒント(StyleHint)」と連動した売り場「スタイルヒント原宿」。もう1つは、Tシャツとカルチャーを融合させたユニクロのTシャツブランド「UT」をフィーチャーした売り場の「UTポップアプト」だ。
「スタイルヒント原宿」は、壁面を埋め尽くす240台のディスプレーに次々と着こなしが投影され、その中から自分にぴったりの着こなしを発見し、ほしい商品については、同店やECで購入できる。コンセプトは「未来の服のライブラリー」と、同売り場や同アプリ、ECを統括する日下正信グループ執行役員は話す。「われわれは全社を挙げた有明プロジェクトを通じて、情報をもとに服を作り、情報と共に服を届けるブランドに変革することを目指している。服こそが情報そのもの。情報を探すときには、本屋や図書館に行く。服という情報を収集・発見する図書館のような店を作りたいと考えた。デジタルとリアルを融合した新しい体験を提供したい」と続ける。
1階の「UTポップアウト」は、「ポップアップではなく『UT』の世界観が飛び出してくるぐらい、迫力を持ってカルチャーを発信していく」(松沼礼マーケティング部統括部長)売り場として命名。「UT」として、世界最大級のフロア・品ぞろえにすると共に、コラボレーションをしているクリエイターの作品など、「ここでしか見ることができないアート」も展示。オープンに合わせて打ち出しているのは、アーティストのビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)と現代美術家の村上隆とのコラボだ。入り口には村上が手掛けた、アイリッシュの全長3メートルのモニュメントを設置。同コラボの商品は、「日本では原宿店を皮切りに全国で販売する。一部の国ではすでに販売し、非常に大きな話題、共感の声をいただいている。音楽と現代アートのシーンをけん引している2人とともに、カルチャーの交差点となるようなコラボになった」という。
他に、現代美術家のダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)×人気アニメ「ポケモン」、「アンブッシュ(AMBUSH)」のYOON×ミニーマウスといったコラボがそろう。また、「UT」として、アパレルやTシャツだけでなく、新たにお土産感覚の雑貨をそろえている点もニュースだ。ノート、ステッカー、バンダナ、豆皿などがある。
松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)