ファッション

「ユニクロ原宿店」を隅々までパトロール! カルチャー発信の手法や見どころを解説

 「ユニクロ(UNIQLO)」は6月5日に、JR原宿駅前の商業施設「ウィズ原宿」内に「ユニクロ原宿店」をオープンする。若者をメインターゲットにする同店では、リアルとバーチャルを融合した体験型の店舗を目指している。開店に先駆けて、見どころを一足早くレポートする。(PHOTOS:KAZUO YOSHIDA)

店の顔「UTポップアウト」には3メートル級ビリー像が

 原宿駅前に面した1階、「イケア(IKEA)」隣のスペースには、「この店の顔」である「UTポップアウト」を配した。外側から店内奥の大ディスプレーに映し出された映像や、ティッカー(メッセージが表示される赤い電光掲示板)、メタル調のマネキンやガラス張りの天井などで、ハイテク感やフューチャリスティック感を醸し出している。店のシンボル的存在としてオープン時にそびえるのが、現代美術家の村上隆がこの店のために作り上げた、ポップアイコン、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)の3メートル級の像だ。「ユニクロ」とビリー、村上とのトリプルコラボTシャツを着用した真っ白なビリー像は、肉感的かつイノセントなイメージに仕上がっている。世界に一つ、ここでしか見られない。ファンの聖地的な存在になるのか、注目される。

 原宿は、1998年に「ユニクロ」として首都圏初の都心型店舗を出店した街であり、「UT」も2007年に1号店を出店した場所。「UTストア」は12年に営業を終了したが、「UTポップアウト」は当時を彷彿とさせつつ、さらに進化。Tシャツはガラスケースに入り、ミュージアムのような雰囲気も。Tシャツだけでなく、新たにライフスタイルグッズの取り扱いを開始。ステーショナリーや豆皿、バンダナ、ステッカーなどを販売する。来店記念として手軽に買えるグッズがあるのは、若者層には特にうれしい施策だ。

地下1階にはカスタマイズブースや「スポティファイ」コラボも

 「UTポップアウト」から中階段でもつながる地下1階には、ユニクロのカジュアルウエア、スポーツウエア、デニムなどと共に、いつでも、どこでも、誰でも、自分だけのTシャツが作れるサービス「UT me!」などのサービスも充実。カジュアルウエアのコーナーは、原宿を意識したストリートムードいっぱいのコーディネート。オーバーサイズのTシャツやブルゾンなどで全身をコーディネートする。

 カルチャー訴求に欠かせない音楽施策も用意。ここでしかできない体験として、音楽配信サービスの「スポティファイ(Spotify)」と協業し、スペシャルブースを展開。CHAIやCHELMICOといったアーティストの特別選曲のプレイリストをその場で聞いたり、ダウンロードしたりできる。アーティストは定期的に変わっていく予定。

240台のモニターが並ぶ「スタイルヒント原宿」は進化途上?

 「UTポップアウト」に並ぶ目玉売り場として、地下1階のエスカレーターを降りた正面の独立スペースには、着こなしアプリ「スタイルヒント(StyleHint)」と連動した売り場「スタイルヒント原宿」を展開する。「未来の服のライブラリー」をコンセプトにした同売り場では、壁面に240台のモニターがズラリ。モニターでは、消費者がアプリに投稿したルックが次々と切り替わる。その中から、好きな商品のビジュアルをタッチすると、色違いやサイズ展開、在庫、そして、「ユニクロ原宿店」のどこにその商品があるのか、マップが表示される。QRコードを読み取ると、店内マップが自分のスマートフォンに表示されてより便利に使える。

 内覧会時には、「スタイルオーディション」というスタイリングコンテスト企画を行っていたためか、ルック内の商品と、その商品に合わせた別のルックとコーディネート写真は見られるが、別アイテムを探すことはできず。ちょっと拍子抜けしてしまうかも。

サステナビリティコーナーも設置、学生と協業しリサイクルも

 サステナビリティについても積極的に伝える施策をしている。地下1階階段下のメインのコーナーでは、大型の古着回収ボックスの周辺に、東レと組んで再生ペットボトルから作り上げたドライEXのポロシャツや、再生する際にできたペレットや再生糸なども陳列。さらに、ユニクロの人道支援やコミュニティ支援などの取り組みも紹介している。

原宿店の新商材は生花や観葉植物、充実の書籍もチェック

 地下1階の吹抜け部分では、「ユニクロ パーク横浜ベイサイド店」からスタートした生花のワゴン発売もある。原宿では新たに多肉植物やミニサボテン、コーヒーの樹など、小型観葉植物も取り扱う。一束390円、3束990円とユニクロ価格。鉢植えは390円と990円を予定している。

 店内の随所で、書籍を販売・展示している点も新しい。新書や中古がミックスされ、ファッションのバイブルといわれる「チープシック」や、「アンアン(an・an)」「オリーブ(olive)」「ポパイ(POPEYE)」「ブルータス(BRUTUS)」などの雑誌、葛飾北斎やアナ・スイ(ANNA SUI)など「UT」関連のアートブックなど、ファッション、カルチャー、アートの要素を色濃く反映している。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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