スペイン発ラグジュアリーファッション・フレグランス企業のプーチ(PUIG)はイギリスのラグジュアリーコスメブランド「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」を買収する。セレブリティーのメイクアップを担当するイギリス人メイクアップアーティスト、シャーロット・ティルブリー(Charlotte Tilbury)によるブランドだ。今回の取引額は明かされていないものの、業界筋は 12億ポンド(約1428億円)にのぼると予測する。また、同ブランドのEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)は約2000万ドル(約21億円)だという。今回BDTキャピタル パートナーズ(BDT CAPITAL PARTNERS)も少数株式を買い取り、プーチのファイナンシャルアドバイザーを務める。なお、シャーロットは引き続きシャーロット ティルブリーの会長と社長、チーフ・クリエイティブ・オフィサーを務め、ディミートラ・ピンセント(Demetra Pincent)も引き続き最高経営責任者(CEO)を務める。
シャーロットは2013年に、元々ロンドンでマッキンゼー・アンド・カンパニー(MCKINSEY & COMPANY)でラグジュアリーグッズ部門を率いていたピンセントCEOと共にブランドを立ち上げた。シャーロットはこれまで数々のセレブや大手ファッション誌のメイクアップを担当してきおり、そのキャリアをベースにしたメイクアップやスキンケア、フレグランスをラインアップしている。人気製品の「マジック クリーム」(100ドル、1万700約円)は彼女がセレブのメイクをする前に仕込むスキンケアとして有名だった“秘密のクリーム”を製品化したもので、「マット レボリューション リップティック(ピロー トーク)」(34ドル、約3600円)は彼女の鉄板といえるヌーディーなリップをかなえるアイテムだ。
17年にはシリコンバレーを拠点にするベンチャーキャピタルのセコイア キャピタル(SEQUOIA CAPITAL)がブランドに投資。18年の売上高は前年比34%増の1億9万ドル(約107億円)、EBITDAは同35.7%増の380万ドル(約4億660万円)に達するなど、現在も急成長を遂げている。シャーロットは「プーチとタッグを組むことによりわれわれが抱く大望をかなえ、新たな可能性を切り開くことができるだろう。プーチは世界の最もユニークでプレミアムなファッション・フレグランスブランドをいくつも抱え、創業者の意志を尊敬しながら素晴らしいストーリーテリングやクリエイティビティーによってブランドを支える企業だ」とコメント。
「シャーロット ティルブリー」はスキンケア事業も好調で、さらにECも大きく伸びているという。そんなブランドをプーチは今後ライフスタイルカテゴリーにも進出できるとし、大きなポテンシャルを持つと見ている。今回の買収によりプーチは「ラグジュアリービューティ市場で3本の柱(フレグランス、メイクアップ、スキンケア)で戦えるようになる」という。
また、プーチは2019年度の通期決算も発表した。売上高は前年比5.1%増の20億3000万ユーロ(約2415億円)で、純利益は同6.6%減の2億2600万ユーロ(約268億円)だった。「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「パコ・ラバンヌ(PACO RABANNE)」「ニナ リッチ(NINA RICCI)」「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」など、ブランドやライセンス事業を所有する同社の売り上げの86%はスペイン国外からなり、そのうち41%は新興市場が占めた。また、同社の製品は世界で26の現地支社を構え、製品は150カ国以上で販売されている。近年はカラーコスメを強化しており、19年には「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」のビューティライセンスを取得して大きな成功を収めている。