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ミラノの有力ギャラリー、ニルファーのオーナーが自宅を披露 巣ごもり生活はテラスで楽しむ

 イタリア・ミラノの「ニルファー・ギャラリー(NILUFAR GALLERY以下、ニルファー)」は、インテリアからアート作品まで幅広く紹介する有力ギャラリーだ。同ギャラリーは1979年、ニナ・ヤシャー(Nina Yashar)が設立。毎年開催される「ミラノサローネ(MILANO SALONE)」では、その独特な世界観とともに存在感を放っている。今年は新型コロナウイルス感染拡大で「ミラノサローネ」が中止になった。オーナーのヤシャーにロックダウン中の巣ごもり生活について聞いた。

WWD: ロックダウン中の一日のスケジュールは?

ニナ・ヤシャ―=ニルファー代表(以下、ヤシャー):ロックダウン中は、信じられないほどリラックスした日々を送っている。ベッドで朝食後に、オンラインでピラティスのコースを受けて、仕事を始める。自宅は2階建てで、私は大きな寝室と広いテラスがある2階で過ごしている。天気がいい日は、テラスで仕事をするわ。予想もしなかったことだけど、毎日約6時間、電話をはじめスカイプやZoomを使ってスタッフとミーティングをしてスマートワークを実践している。自宅のリビングルームやテラス、ダイニングルーム、私のスタジオやクローゼットなどいろいろなところに変化がつけられるのが楽しく、それが私のノマド的な一面を満足させている。

WWD:週末はどのように過ごしているか?

ヤシャー:週末は読書をしたり、夫と一緒にフラワーアレンジメントをしたり、友人と電話で話たりしている。私の一番の楽しみで必ずするのが、夕暮れ時のテラスでのアペリティーボ(食前酒)。

WWD:ロックダウン中に新たな趣味や関心を持ったことは?

ヤシャー:もちろん。毎日の瞑想は欠かせない。それをして、ネガティブなことに押しつぶされないよう平常心を保っている。自分の時間が増えたので、クラシックを聴きながらお茶を飲んでリラックスできる喜びがあるし、長らく感じていなかった完璧な雰囲気の中の深い安らぎを感じる。また、古代文明について学ぶことに熱中している。全く関心がないと思っていた量子物理学についても読んでいる。

WWD:ロックダウン期間中の楽しみは?

ヤシャー:屋外での生活を再発見した。天気のいい日は、テラスで過ごすようにしている。今までは日ごとにバラの花が開いていくのを見たことがなかったが、自然の法則で花開く様子を見ることは信じられないくらい素晴らしい経験で、感謝の気持ちと満足感を与えてくれる。

WWD :多くの人が自宅で過ごしているが、家の中のデコレーションのアドバイスは?

ヤシャー:春は花を飾るのが大好き。花は喜びと幸せを与えてくれるし、家と住人に色鮮やかでポジティブなエネルギーを与える。エネルギーに満ちた植物も部屋に雰囲気をプラスしてくれる。

WWD:新型コロナウイルスによるロックダウンが人々の心にどのように影響していると思うか?この状況とどのように向き合っているか?

ヤシャー;強制された隔離状態にあるにもかかわらず、一日中誰にも会わず一人でいることに対する適応力に自分でも驚いている。まず気付いたのは、自宅をよく知らなかったということ。そして、誰にもじゃまされることなく集中できるので、思考がいつもより明瞭であるという点。私の会社における組織や、将来のクリエイティブなプロジェクトについて革新的な行動ができる。1時間じっくり一人のデザイナーと話しをすることもある。25人以上のデザイナーと仕事をするが、私にとってこのロックダウンの時期、彼らとブレーンストーミングしたり将来のプロジェクトを話し合う時間を持つことはとても大切だ。特にクリエイティビティーにとってそれは重要なこと。だからこのロックダウンは、私自身の将来におけるスピリチュアルでプロフェッショナルなゴールを見つめる機会になった。

WWD:自分にとっての家の定義は?

ヤシャー:自宅はミラノのリソルジメント地域にあり、30年間夫と娘と住んでいる。私にとって家とは、私が愛する多くの要素と私の個人的な愛情が出合う場所。特殊な2階建てのペントハウスで、部屋が続いている。そのユニークさとテラスの多さが気に入っている。テラスからの景色をたのしんだり、天気がいい日は多くの植物の世話をしたりしている。この家の改装は、私の親しい友人でジュエリーデザイナーのジャン・カルロ・モンテベッロ(Gian Carlo Montebello)に頼んだ。なぜなら、トップの建築家には頼みたくなかったから。壁や天井にはペルシャのシンボルやモチーフが彫られたパステルカラーのフレスコが施されている。30年経ってもとってもユニークだと思う。以前よりも家のことを愛しているし、私にぴったりの家だと思う。

WWD:お気に入りの部屋は?その理由は?

ヤシャー:家の角にある私のワードローブ。なぜなら守られていると感じるし、空想にふけりたい時にこもる場所だから。この部屋全体に、私が心から愛する「プラダ(PRADA)」の古代遺跡(ANTICHE ROVINE)素材が施されている。これはミウッチャ・プラダ(MIuccia Prada)が2013年に、17世紀に建てられたパリの個人邸宅で私行った展覧会「スポット」のために提供してくれた。展覧会が終わって、すっかりこの素材を気に入ってしまったので自宅に持ち帰ってワードローブのドア全体に使い、読書ができる小さな場所をその片隅に作った。そこでは「ニルファー」のコレクションの中で私が大切にしているアンティークカーペットや、オットー・シュルツ(Otto Sxchulz)によるアームチェア、ジオ・ポンティ(Gio Ponti)による小さなコーヒーテーブル、ハンス・アウネ・ヤコブソン(Hans Agne Jakobsson)のものなどを置いていて、素材と色彩的調和を保っている。

WWD:快適な環境づくりおける最も大切なことは? 

ヤシャー:それぞれの人の個性と必要を反映した環境であること。今、家で過ごす時間が長いので、部屋のオブジェの位置を変えたりして新たな家庭環境をつくるいい機会だ。

自身の空間を自分らしくすればするほど、穏やかな気持ちで過ごせる。私は、家具と異なる文化や時代のデザインを組み合わせて意外性のある空間をつくるのが理想だ。

WWD:新型コロナウイルスは人々の生活にどのような変化をもたらしたか?

ヤシャー:このような状況で、世界はビデオなどデジタルやテクノロジーを駆使した新しいツールを通じて外の世界とつながることができると分かり始めた。これが新型コロナウイルス終息後の新しい波となるだろう。人々はかつて考えていなかった多くのことができると分かった。それは物理的ではないが、人々を近づける方法だ。重要なのは、ロックダウン後に企業がビルやオフィスに多くの費用を使っているが、それら多くが無意味になるだろうということ。さらにスマートワーク化が進むだろう。これは地球規模の環境汚染を考える上ではよいことだ。車を使う人も減るだろうし、2時間かけて通勤する人も減るだろう。人々のライフスタイルはより質の高いものに変わるはずだ。自宅で仕事をし、趣味をはじめ、ロックダウンで発見した自身にとってプラスになることに時間を多く使えるようになる。

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