※この記事は2020年1月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
“総じて”コンサバなミラノメンズを見て思う
2020-21年秋冬ミラノメンズが終了しました。一番の感想は、「あぁ、(一応)ちゃんと個々のブランドを見続けてきて良かったなぁ」です。原点回帰した「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」や「ディースクエアード(DSQUARED2)」、時流のクラシックエレガンスにスプーン一杯くらいの“らしさ”を忍ばせた「MSGM」や「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」、そしてサステナブルの取り組みが加速する「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」や「プラダ(PRADA)」、前進するために過去を振り返った「グッチ(GUCCI)」。いずれの提案もブランドを知る人間はヒザを打つけれど、そうでない人には違いがとっても分かりにくい。そんなシーズンだったからです。︎
「アッ」と驚く提案はありません。新しさはもはや、簡単には見つかりません。それは仕方ないし、それで良いとさえ思います。もうムダを生んではいけない時代ですからね。
でも1つ、危惧することがあります。
さぁコレ、どうやって消費者に伝えましょうか?
上述の通り、それぞれアプローチは異なります。でも結果は大体コンサバ、そんなシーズンでした。例えば「ドルチェ&ガッバーナ」は、90年代が懐かしくなるブランドならではの野暮ったいフォーマル。懐かしのヘンリーネックのインナーは「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」にも登場しますが、ここではむしろカジュアルを果敢に取り入れ始めたアルマーニ顧客への新たな提案です。
「エトロ(ETORO)」と「グッチ」は共に過去を振り返り、結果、いつもより大人しめのクラシックにたどり着きました。前者は先人の知恵に影響を受け、それを継承するためクラシックを提案しました。でも後者は既成概念を超越すべく、リセットするために過去を省みています。今を変えたいから、過去に遡って、根本を変えられたらと願っているのです。過去に対する想いは、それぞれ真逆なのかもしれません。
とこのように、最終的なスタイルは収斂しつつも、そこに至るまでの道程は全然違う。そしてそれは、長年定点観測する私たちは気付くけれど、消費者はよっぽどマニアじゃない限り分からない。でも、分からないと区別出来ないから、高額品に共感してくれないかもしれない。そう考えると、大変なシーズンです。
改めて「一致団結」が問われますね。まずは私たち、伝える側が個々のブランドの思いを正しく伝えること。その上でバイヤー、買い付ける側も理念に共鳴し、それを販売員が消費者に訴えること。それができないと、実売には結びつかないシーズンな気がします。
というコトで、今回は(今回も)思いをきちんと伝えたい。ミラノメンズのウェブリポートは一段落ですが、まだ紙面が残っています。さらに今回は口頭で伝える場を積極的に設けたいし、機会があれば参画したいところです。ぜひ、お声がけくださいませ
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