※この記事は2020年1月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「片寄涼太、いかがでしょうか?」
コレクションに来ると、多くのセレブリティーやインフルエンサーに出会います。さまざまなメディアが、「来場した●●さんをキャッチ!」なんてツイッターやインスタグラムを上げるから、もちろん皆さんもご存知でしょう。
セレブやインフルエンサーの勢いは凄まじく、例えば前回のウィメンズでは、日本から40人を超える方々がパリに渡ったそうです(代理店情報)。「WWDジャパン」には、そんな彼女たちに注目するソーシャルエディターが存在し、その投稿は私たちのアカウント、もしくはサイトに少なからず新客をもたらします。もちろん、その新客が長くお付き合いできるファンになってくれるか、はまた別の話ですけれどね。
というコトで、ミラノやパリコレに赴くとそんな方々の隣や向かいに座る機会もあって、正直、生来人見知りなせいか不要にドキマギしてしまうのですが、心の中では彼らを吟味しています(生意気!!)。見定めるのは、洋服が似合っている・似合っていないよりむしろ、自分の役割を理解しているか・していないか。その視点で考えた時、中国や韓国勢に勝てる日本人セレブやインフルエンサーは正直多くなく、寂しい気持ちになることもしばしばです。できれば彼らには、洋服を着せられて、車に乗って、来場して、フラッシュを浴びて、ショーを見ておしまいではなく、ブランドを学び、デザイナーや経営者に自分なりの英語で挨拶して、ショーを見て、何をどう感じたか発信して欲しい。でも「ブランドを学び、デザイナーや経営者に挨拶して」さえクリアできる日本人セレブは少数派。この段階で、事前に情報を叩き込んでくる中国や韓国勢に負けています(もちろん、中国や韓国勢に負けてられないのは、私たちメディアもおんなじです)。
その意味で今は、1人の芸能人に注目しています。片寄涼太さんです。
初めて彼を見たのは、もう数年前の「ランバン」のメンズ・コレクション。当時のPRから「ブランドのオーナーの顔もご存知で、挨拶しようとしてくれたので驚いた」との話を聞きました。時効だと思うので話しますが、当時の「ランバン」のオーナーは嫌日派。ゆえに結局、挨拶はされなかったそうなのですが、何れにせよ経営者の顔を知っていたのは驚きです。
で、今回のパリメンズでは彼と食事する機会に恵まれて、翌日訪れる「ロエベ」のジョナサン・アンダーソンの話になりました。彼は「YouTubeでインタビュー動画を何本か見たのですが」と話し始めます。その動画の、どこで、どう共感できたかについて話し始めたのです。
「素晴らしい」。単純にそう思いました。日本人セレブやインフルエンサーの多くが片寄さんのようになれば、私たちの国の存在感はもっともっと増すことでしょう。ブランドについて学んだ人間のSNSへの投稿は、「片寄クン、カッコいい!!」と消費されるだけでなく、ブランドの本質について知るきっかけになり得ます。こういう人が増えると、私たちとしては、とっても嬉しいですね。
好奇心を掻き立てられ、彼の公式インスタアカウントを訪ねて、フォロワーと、投稿について1時間くらい眺めてみました(←「仕事をしろ!!」と突っ込まないでくださいw)。意外に男性、いや、男子フォロワーも少なくない。そしてカール・ラガーフェルドが亡くなった時は、大帝の顔が描かれたブルゾンを見て感慨に浸っている写真を「R.I.P.」のコメントをつけて投稿。コメントには「この投稿を見て初めて、カール・ラガーフェルドの名前を知りました。ご冥福をお祈りします」などの返信があって、少なからず片寄涼太ではなく、業界について知らしめてくれたのだなぁ、と思いました。
私は事務所の人間でも、マネージャーでもありませんが勝手にオススメします。「片寄涼太、いかがでしょうか?」(笑)。
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