※この記事は2020年1月31日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
AIは敵わない、未知と出合える接客を
このエディターズレターで週刊紙の「WWDジャパン」の向編集長が「残念な接客トーク」というお手紙を送っておりましたが、至極同意なワケです。「試着できますよ〜」ってナンナンダ?「ご試着いかがですか?」じゃないのか⁉︎試着できるって知ってるから、ECじゃなくてリアル店舗に足を踏み入れたワケですよ。何でこの言葉、絶対的な「最初の一言」になっちゃったのかな?
で、コレはまた別のコラムで、同じく向編集長は「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」で未知と出合う機会を与えてくれた感動的な接客について話していましたが(多分5年前くらい。よく覚えてるでしょw?)、コレもまた至極同意なワケです。ハッキリ言えばリアル店舗で買う理由って、1.すぐに手にできる 2.近くに立ち寄った 3.ちょっとおしゃべりしたい 4.ECでは出合えなかった洋服に出合いたい、のいずれかなワケです。
で今日は、別に向編集長の話がしたいワケではなく、上述の「ECでは出合えなかった洋服に出合いたい」って、デジタル時代の今、本当に大事ですよと、デジタル編集者の端くれとして主張したいのです。
アルゴリズムに支配されているデジタルの世界では、マジで未知と出合うのは難しいのです。皆さん、アマゾン(AMAZON)とかで一度買い物すればお分かりかと思いますが、あのアルゴリズムは強力ですよね(笑)?しかも日々進化し、行動履歴に基づき「買いそうだなぁ〜。いかがですか?」という商品を提案します。あれほどの高性能アルゴリズムがあらゆるECに導入されたら、私たちは、永遠に未知の世界なんて知ることができなくなるでしょう。
でも、それは便利な一方で、ちょっとコワいし、ツマラナイ。特に「結局、私たちはアルゴリズムが選ぶモノから選んでるじゃん!そこに自分はあるのかしら?」というストレスは着実に増しているワケです。
そこで!リアルですよ。店舗でスタッフが未知と出合わせてくれたら、たちまちファンになるハズです。だから「試着できますよ」なんて言ってる場合じゃないのです。来店の瞬間から、「この人の未知は何?アルゴリズムでは出てこないモノって何?」と必死に考えて欲しいのです。
今読んでいる菅付雅信さんの新著「動物と機械から離れて」によると、やっぱりAIにはセレンデピティ(偶発性)を提供するのが難しいらしいですよ。下にリンクを貼ったAI分析のショップだって、ぶっちゃければ“売れそうなモノ、AIが集めました”っていうブティックです。AIには、そもそも偶発性を理解することさえ難しく、理解した瞬間、それはもはや偶発性ではなくなってしまうのでしょう。難しい話になりそうなのでそろそろ終わりますが、少なくともAIが未知を提供してくれるようになるには、まだまだ時間がかかるでしょう。今のうちに、お客さまに偶然の出合いを装った未知を提供してしまいましょう。
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