「ナイキ(NIKE)」は6月11日に、工場や消費者の廃棄物からプロダクトを作るナイキの実験的フットウエアコレクション“ナイキ スペース ヒッピー”を発売する。販売は「ナイキ」のオンラインストア「SNKRS」と青山のナイキラボ MA5で行う。これは、サステナブルな行動と大胆なデザインを融合させる試みで、従来同様のシューレースを使ったものやシューレースのないデザインを含む4つのスタイル(1万5400~2万1450円)をそろえ、それぞれユニークな美しさやフィット感を提供する。
85~90%のリサイクルポリエステルを含む“宇宙ゴミの糸”と呼ぶ糸や、「ナイキ」の“ズームXフォーム”や“ナイキ フォーム”、“ナイキ グラインド ラバー”のスクラップを混合した“クレーター フォーム”を用いて炭素排出量を抑えている。
開発を手掛けたノア・マーフィー・ラインヘルツ(Noah Murphy-Reinhertz)=イノベーション サステナビリティ デザイン リードに話を聞いた。
WWD:“スペース ヒッピー”を発売するにあたり、“宇宙ゴミ”という表現がとても印象的だったが、なぜ“宇宙ゴミ”と名付けたのか?
ノア・マーフィー・ラインヘルツ=イノベーション サステナビリティ デザイン リード(以下、ラインヘルツ):“スペースジャンク(宇宙ゴミ)”は、「ナイキ」の工場の床に落ちたスクラップ素材の愛称で、これを“スペース ヒッピー”の大胆なデザインに変身させている。先進的なランニングシューズを作るときには、そこで発生するゴミでさえ本当にテクニカルなものになるから。
“宇宙”と結びついたのは、ブレーンストーミングをするために、みんなでいろいろな素材を持ち寄ってそれぞれが違う素材を糊でくっつけたり、結び合わせたり、不思議な素材から何ができるかを考えていたときだった。誰かが、「もし私たちが宇宙にいたとすれば、自分でシューズを作ったり直したりしなくてはいけないよね。そんなときみんなならどうする?」と発言した。ちょうど、映画の「オデッセイ(The Martian)」を観たばかりで、しかもオレゴンで大規模な日食があった直後でもあったから、宇宙と結びついたいろんな発想が生まれたんだ。
そして「ある人の宇宙ステーションがヤバイ状態になっているから、その人はジャガイモを育て始めているよ。自給自足しているけれど、でも宇宙なんだよね。なんだか、宇宙にいるヒッピーみたいだね」「それはおかしいね。絶対あるわけない」などと冗談を言って笑い合っていた。その直後に“Space Hippie”と書いたワッペンやTシャツを作ったんだけど、それが皆にとてもうけたんだ。それから5~6カ月間、精妙な宇宙技術と即興的なイノベーションの間の微妙な関係を考える中から、シューズの姿が浮かんできた。それがプロダクト作りにつながっていった。
“スペース ヒッピー”の製造工程を紹介する動画
WWD:“スペース ヒッピー”は「ナイキ」が取り組むサステナビリティを表現したプロダクトの一つだが、デザイン&作る工程で特に重視した点は?
ラインヘルツ:コンセプトはシンプルで、まず自分たちの足元を見つめた上で創意工夫を凝らし、炭素排出ゼロ実現の未来を目指して廃棄物をフットウエアやアパレルに変えていく、ということ。宇宙探索の世界ではこれを「ISRU(In Site Resource Utilization/その場の資源の利用技術)」と呼んでいるが、そのアイデアを地球でも応用しようとしている。“スペース ヒッピー”では、廃棄物の可能性を見出して直接人と関わるものを作っているし、素材をまず前面に打ち出して、見る人に直接語りかけられるようにしている。
“スペース ヒッピー”のフライニットの糸は、水のプラスチックボトル、Tシャツや糸くずなどの再生素材から100%作られていて、染色工程を省いているため、原料そのものの色や素材感が残っている。シューズの全てのパーツから物語が伝わり、炭素排出ゼロを実現するためのISRUのアイデアが強く伝わるようにしたいと考えた。
ソール素材の“クレーター フォーム”には、“ナイキ グラインド ラバー”を15%と“ズームXフォーム”の端材を100%リサイクルしたものを混ぜ合わせることで、これまで以上にサステナブルで、街を探索するときにも軽さと反発感を実感してもらえるはず。見た目も、青いパテにゴミからできた紙吹雪が散らされたように仕上げた。独創的かつ魅力的で、このシューズは何からどうやって作られたのだろうと思わせる仕上がりでしょう?