※この記事は2020年2月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
捨てられなくて勿体ない
このメルマガでも「イケてる」とか「斬新」みたいな言葉で紹介しがちなのですが、IT業界だって別にパーフェクトじゃないワケです。先日、「WWDJAPAN.com」の連載を刷新しよう(乞うご期待!)と共に構想を練ったIT賢者のCKRサンに聞いたのは、「2025年の崖」と言う問題。大昔に開発し、その後は個別に改修したり付け足したりを繰り返して肥大化したシステムがいよいよ老朽化し、もはや誰も全容がわからないソレが立ち行かなくなるのが2025年、なのだそうです。CKRサンによると、IT業界も昔のシステムを保守すべく若手を育成していますが、デキるエンジニアは引く手数多の時代。AIやブロックチェーンなど心をくすぐるテーマが盛りだくさんの中、「顔も知らない“原始人”が作ったシステムなんて、改修してらんね~よ」と辞めてしまう人が多いであろうことは、容易に想像できます。
CKRサンによると、ある調査では、「企業のIT予算の8割が、既存のシステムの維持・運営に利用され、新規投資に振り向けられない状況」だそう。「捨てるものは捨てる、刷新待ったなし」と続けます。
この話を聞いたとき、「あ、ファッション業界の課題と同じだ」と思ったのです。私たちも“捨てられない問題”抱えていますよね~。クローゼットの洋服の話じゃないですよ。ビジネスの話、であります。
私が“捨てちゃって勿体無い”ではなく、“捨てられなくて勿体無い”と思ったのは、三陽商会の「キャスト:(CAST:)」。以前も「シネマコマースって、どうなの?」と言う話をしましたが、ソレはさておき、映画からECという動線を確立したかったのであれば、正直「30近い百貨店のショップって、必要だった?」と思うのです。百貨店への出店というチャンスが勿体無くて“捨てられなかった”のかなぁ?20年春夏の展示会で、「ECは伸びてきたが、特に店舗は課題もまだまだ」と言う話を聞いて、「でしょうねぇ」と思わざるを得ませんでした。店舗網の見直し、つまりリアル店舗のいくつかを“捨てる”ことができれば、他のさまざまに注力できるのでは?と思うのは、“甘ちゃん”の考えでしょうか?
某百貨店グループは、経営トップが「今後、付き合うべき会社」として、数年後ではなく数十年後も生き残っているであろう企業をズラ~ッとリストアップ。全社員が「注力すべきは、リストの会社」と認識し、日々の業務に励んでいると聞きます。逆を言えば、リストにない会社は、思い切って“捨てた会社”とも言えますね。“捨てる”勇気、そして、それを共有できる形で示した度胸に感銘を受けました。業界の中では、一番効率的に利益を生んでいる、あの百貨店。その秘密は、「捨てるものは捨てる」勇気なのだと思います。
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